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兼任広報担当者向け広報基礎知識-12 社内報のポイント

2017年度に『月刊総務』の「総務の引き出し(広報)」に、兼任広報担当者向けに、広報の基礎知識をご紹介する連載を寄稿しました。
内容を一部加筆・修正して掲載します。


今号は、社内報のポイントをご紹介します。社内報は、紙媒体からイントラネットなど多様な発行形態になっています。社内報の役割・期待効果も、古くは社内の情報共有を中心にした媒体だったものが、たとえば、社内報をきっかけにしてコミュニケーションを誘発させる、社内報を理念・戦略の浸透ツールとする、社内報を通じて日々の業務に直結するノウハウ・メソッドを共有し社員教育をする、など、会社によって活用の仕方も様々になっています。一方、生産性向上で余裕がなくなった現場、ペーパーレス化が進み資源に対する意識が変わった現場から、社内報に対する社員の評価は厳しい目もあります。


社内報はムダ?

昨年(2017年)12月に、ビジネスパーソンの方に、「社内報の意味や効果」について自由回答で尋ねるインターネット調査を行いました(弊社調べ。協力:ミルトーク)。回答が得られた約400件のうち、およそ半数程度が「いらない」「意味ない」「発行にかかる費用の分、給料増やせの世界」「偉い人の自己満足」「本社の仕事をつくるための仕事」など、辛らつで否定的な声がたくさんありました。とくに紙媒体の発行に対する否定的な声が目立ちます。

私が広報実務を担当していたとき、社内報の制作も広報部管轄でしたので、社内報に対する否定的な評価を肌で感じることはありましたが、この匿名アンケートによる辛らつな声の数々を目にしたとき、「これが現実なのか」と悲しい気持ちになりました。


社員から評価される社内報とは

一方、効果があるとする声も半数程度あります。落ち着いて考えると、5割程度も高評価される社内ツールなら、まだまだ存在感・影響力が多大にあると見ることもできるでしょう。社内報を支持する声をいくつか具体的にご紹介しましょう。

否定・肯定の声を1件1件確認し、集約すると、社内報は紙発行やイントラ活用に限らず、以下の3点が「社員目線」で重要だということが見えてきました。

  1. 「情報源」になる
  2. 日々の業務で役立つ情報を得ることができる
  3. 視点・視野・視座が変わる情報を得ることができる

情報源になる

自由回答の声では、「新人」「社員の冠婚葬祭」「人事異動情報」「他部署の動き」「会社の進む方向性」「福利厚生」「趣味」など、キーワード自体は様々ですが、社内報を評価する声のウラには必ず「情報源」として機能していることが分かりました。逆に言えば、イントラなど他の媒体で得られる情報を単に再録・周知しているような社内報は、発信形態が何であっても情報源として機能せず、評価されないということです。


日々の業務に役立つ情報が得られる

調査では、他部署が紹介されているので何か困ったときに連絡をとるきっかけになる、他部署の事例からどうやっていけば良いか分かる、成功例や失敗例が参考になる、といった回答が見られました。これもひとつの情報源ではありますが、具体的に日々の業務に役立つかどうかが社内報の評価を左右するといっても過言ではありません。換言すると、社内報が社員を支援するツールになり得ていなければ、社員からは評価されないのです。

視点・視野・視座が変わる

社内報を好意的に評価する声では、一体感や求心力の醸成といったキーワードが多く見られました。普段、仕事に取り組んでいると、どうしても自部署や自分の業務に視野が狭窄しがち。硬めのネタでいえば会社全体のことを俯瞰できて愛着がわく、柔らかめのネタでいえば普段接している人の違った一面が分かるなど、視点・視野・視座が変わる情報は印象に残りやすいようです。

自己満足にならないために

発行側にとって社内報の目的は、理念浸透やコミュニケーションの誘発、経営と社員との関係構築など、これまで見てきたような社員評価とは別軸で存在しています。その目的を達成できれば、社員の評価は別問題という見方もできるかもしれません。ところが調査結果からは、社員の評価を得られなければ、社内広報業務そのものへの共感が弱まってしまう、ひいては目的を達成することができない恐れがある、という論理の方が現実に近いと考えられました。

社内報業務は、あらためて社員にとっての情報価値と向き合うべきでしょう。コミュニケーションのきっかけをつくる、理念を浸透するなど、社内報の役割・機能を見出すことも大切ですが、いつの間にか社員のことを考えているようで社員の存在を忘れてしまっていることがないか、常に確認しましょう。

一年間、総務で広報業務を兼任する方を対象に、効率的に広報業務を進める戦略の策定方法から、広報実務のポイントをご紹介してきました。ありがとうございました。