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広報スキルアップ講座 想像力(企画力)①

2019年度に『月刊総務』の「総務の引き出し(広報)」に、広報の基礎知識をご紹介する連載を寄稿しました。
内容を一部加筆・修正して掲載します。

今回から、広報の仕事をするうえで不可欠な「想像力」を取り上げます。

広報で必要な想像力(企画力)とは

想像力は、一般的に「目の前にないものを思い浮かべる能力」を指します。たとえば、「相手の立場から考える」「箱の中がどうなっているのかを考える」など、目の当たりにできないものを考えるときに「想像」という言葉を使いますよね。

広報で「想像力(企画力)」が必要な場面は、①表現をする前段階、②調整をする前段階―の2つの場面です。

①の表現については、想像力(企画力)の必要性をイメージしやすいでしょう。この連載でも、広報の仕事は表現と密接にかかわっているとお伝えしてきました。表現する際に、相手の立場になって伝わるかどうかを考える、情報価値の所在を考えることは不可欠です。

ただし、この①については、売り込みをしたり魅力を発信したりする「攻めの広報」の領域と、不祥事等が発生した場合に迅速かつ適切に情報開示する「守りの広報」で必要な想像力が異なります。追ってご紹介します。

②の調整場面は、広報の仕事に従事している方はイメージが沸くと思いますが、広報の仕事の大半は調整業務です。
たとえば、マスコミからの取材依頼。記者から取材の要望と期限を聞き、社内の誰が何をどこまで応えるかをすり合わせたうえで、記者の日程と取材対応者の日程を調整し、会議室の空きを確認し・・・。
社内広報でいえば、たとえば役員に対するインタビュー企画。役員に内容を伝えて了解をもらい、取材や撮影を外注する場合は、役員の都合とライターやカメラマンの日程を調整しインタビューを実施。実施後は、原稿と写真の確認でキャッチボールをして・・・。
このように広報の仕事の多くは調整業務です。

調整が多い広報の仕事では、文字どおり調整するだけ(右から左に持って回っているだけ)だと、いつまでも中身が決まらずに進んでいきません。調整が煩雑になるばかりです。こうした事態を防ぐためにも、調整をする前段階から合意形成や調整の進め方のパターンをいくつか想像して、円滑に業務を進めることが大切です。

攻めの広報で必要な「想像力(企画力)」

 今号では、表現場面のうち、攻めの広報で必要な想像力を取り上げます。この想像力は、まさに企画や仮設構築に近いものです。

 攻めの広報とは、パブリシティ(報道)でいえば、打ち出したいネタ(自社が知ってほしこと)、ターゲットの興味(ターゲットが知りたいこと)、メディアの論調や露出状況(広報環境)の3つを精査しながら、できるだけ大きくかつ多数の報道になるように能動的に働きかけるものです。ただ単にプレスリリースするだけでなく、取材を働きかけたり、他社のネタやデータなども含めて情報を整理し企画として提案したりします。

 「報道」ではなく、SNSでの拡散を狙う場合も基本的に同じ構造です。自社が知ってほしいこと、ターゲットの興味、SNS上の口コミの傾向などを確認します。

 報道・SNSのいずれも、環境分析とターゲットの興味をベースに、機会が最大化する「切り口」を考えます。この切り口の「想像」が求められるものです。決して、何もない状態から考える「空想」ではいけません。

 イメージが沸きにくいと思いますので、具体例をもとに考えてみましょう。

 私は東京都の武蔵野市と小金井市に住んでいました。両市にまたがるように「東京都立小金井公園」によく行っていました。小金井公園は桜の名所、あるいは公園内にある江戸東京たてもの園がスタジオジブリ「千と千尋の神隠し」のモデルとして有名です。
有名と言っても来園者は近隣住民が多いので、仮に「来園者をもっと増やしたい!」と考えていたとします。

環境分析とターゲットの興味を探るために、来園者の属性や行動を丁寧に観察したとします。
小金井公園は子ども連れの家族が非常に多い。駐車場が多いこと(それでもは入れないことはありますが)、幼児から小学校高学年まで楽しめる多種多様な遊具があるためです。
興味深いのは、園内の広大な芝生と多種多様な遊具がバランスよく配置されていることです。
よく観察すると、子どもたちを「放牧」して、芝生に敷いたレジャーシートのうえで心置きなくおしゃべりしている親が多いことに気づきます。場所によっては視界を遮るものが少ないので、子どもの様子を目の届く範囲で確認しながら、ゆっくりと時間を過ごすことができるのです。

ここまで材料が得られれば、あとは来園者の増加に繋がる「切り口」を想像するだけです。
単なる「お出かけスポット」ではインパクトに欠ける。
子どもがいる親をターゲットにする場合は、「子どもが遊具で喜び、親は子どもの様子を視界に入れながら心置きなくおしゃべりできる気持ちいい芝生が多い場所」という切り口が考えられます。
このような切り口にすると、複数組の子連れ家族による来園が期待できるため、来場者増につながることでしょう。おしゃべりの楽しい時間を考えれば多少の遠出も許容しやすくなるため、「商圏」も拡張できるはずです。

あるいは、ターゲットを子連れに限定せず、友だちと心置きなくおしゃべりできる場所とする切り口も考えられます。一般的に、リラックスしておしゃべりしたくなる場所は、居酒屋やカフェなど飲食店か誰かの自宅ではないでしょうか。飲食店は滞在時間と周囲の目が気になります。自宅は招いてくれた人に負担をかけてしまうことが気になる。公園は両方をクリアできます。
時間も周囲の目も気にせず、誰かに負担をかけることもなく、おしゃべりできる新しい選択肢として小金井公園を提案できるはずです。

攻めの広報では、このような切り口の想像が求められます。切り口を想像するためには、案件・ネタをしっかりと広報担当者が理解している必要があります。考えるための材料がない状態では、単なる思いつき。それは企画ではありません。攻めの広報における「想像力」とは、表現の前段階に行うものであり、材料集めをしたうえで切り口を検討する企画力を指すものとイメージできると良いでしょう。
とくに、攻めの広報をあまり積極的に実施していない会社の場合、この切り口自体を考えるという発想を持っていない場合が多いです。想像力(企画力)を発揮せず、広報の仕事の楽しさを実感できないなんてもったいないです。

ぜひチャレンジしてみてください。

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