2017年度に『月刊総務』の「総務の引き出し(広報)」に、兼任広報担当者向けに、広報の基礎知識をご紹介する連載を寄稿しました。
内容を一部加筆・修正して掲載します。
第5回広報の目標を設定する
前回、特定分野でシェアが1位の製造業の会社を架空のケースとして、【なぜ】【何を】【誰に】【どうやって発信・共有するか】を考える手順をご紹介しました。この会社の強みは「営業担当者に技術の知識・技術があり、顧客接点の最前線で簡単なメンテナンスまでを実現できてしまう」ことにあるとしていました。引き続きこのケースに基づいて、目標設定の方法を考えていきましょう。
いつまで・どれぐらい・どこまで
この架空のケースで言えば、社外広報活動のゴールは、会社の最大の強みをお客さまに認知・評価していただくことです。
お客さまから「この会社の営業担当者は技術に詳しい」「困ったときに声をかけやすい」などと評価されることが定性的な目標となります。
この目標を定量化する場合は、お客さま向けのアンケートを実施し、以下のような設問を入れ込みます。
Q:弊社の営業担当者に対する評価をお聞かせください。
- 営業窓口でありながら技術に詳しいと思う(そう思う~そう思わない)
- 営業担当者は、困ったときに声をかけやすい印象がある(そう思う~そう思わない)
たとえば、架空のケースの会社では現在、「1.営業窓口でありながら技術に詳しいと思う」の「そう思う」割合が60%だったとしましょう。
現状の評価さえ測定できれば、この値を「70%水準に引き上げる」といった定量的な目標を設定できます。
お客さまの認知・評価を得るためには、顧客接点となる自社の社員が、自社のことを「自社の営業担当者は技術に詳しい」「自社では、お客さまが困っているときはできるだけ営業担当者の力量で簡単なメンテナンスをするように推奨されている」などと認知・評価していることが必要です。
これを捉えるために、社員向けのアンケートをとっても良いでしょう。
目標の「種類」
実際には、数値を基準にして目標を設定できる場合ばかりではありません。
目標は、数値基準を含めて、以下の要素を組み合わせて設定することが一般的です。
- 数値基準
- スケジュール基準
- 達成状態基準
1. 数値基準
数値基準は、先ほどの例のように60%を70%に上げる等の数値で表現するものです。
もう少し実務に近づけた目標にしたい場合は、ホームページコンテンツを6件追加する、プレスリリースや企画の提案などマスコミ向けに20回以上の情報提供をする、といった「アウトプット」で設定することが一般的です。
こうした数値基準は、【どれぐらいの規模でやるのか】を明確にするものです。
2.スケジュール基準
スケジュール基準とは、たとえば「3年間で」「1年間で」「9月までに」など、時間軸で区切ったものです。
スケジュール基準は【いつまでにやるのか】を明確にするものです。
3.達成基準
達成状態基準とは、たとえば「マニュアルが完成した状態」「マニュアルを社内周知した状態」などです。
数値での表現が難しい場合、達成状態を明確にします。
達成基準は【どこまでできれば良しとするのか】、範囲を具体化するものです。
目標は、この3つの組み合わせで輪郭が際だっていきます。
輪郭が際立てば、実務的・具体的で達成可能かつ測定可能な目標になります。
架空のケースで言えば、最終成果を目標とする場合、以下のような目標を設定できます。
架空のケースでの広報の目標の例
「お客さまの『営業担当者が技術に詳しい』という評価を、3年間で、現在の60%から70%に上げる」
進捗管理しやすい目標に
前回、架空のケースの広報戦略を考える過程で、【何を】【誰に】がはっきりすれば、出すべき情報を絞り込んでいるのに【どうやって発信・共有するか】に厚みを持たせることができるようになるとご紹介しました。
以下の活動を例示しました。
- ホームページでは顧客接点の強みを中心に訴求して具体論として営業担当者育成を紹介しよう
- 育成アプローチについて営業担当者の生の声を定期的にインタビューしてコンテンツにしょう
- コンテンツの更新情報をお知らせするお客さま向けのメールマガジンをつくろう
- 業界専門紙に営業担当者育成の取り組みを取材してもらえないか働きかけてみよう 等々
実務に近づける場合は、以下のような目標が考えられます。
- 6月末までに、現在の広報活動の課題を整理したうえで、営業担当者育成の取り組みを社外発信する企画を立案し、上長から承認された状態
- 9月末までに、ホームページに新コンテンツを2本アップした状態
- 12月末までに、業界紙への情報提供を行い、取材を1回以上受けた状態
- 3月末までに、HPコンテンツを合計3本以上アップし、メールマガジンを2回以上配信した状態
このように、【いつまで】【どれぐらい】【どこまで】の輪郭を明確にしておくと、進捗を管理しやすくなります。
業績評価で目標管理制度を導入している会社にお勤めの場合は、「兼任広報としてなんらか広報業務の目標を入れなければいけない」ということもあるでしょう。
今回の目標例を参考にしてください。
成果をベースにした目標とするか、実務ベースの目標とするかは、求められる広報活動のレベル感と兼任広報として割り当て可能な時間・労力・コストとのバランスを勘案して決定すると良いでしょう。
●ひとまずどんな人たちか会ってみたい場合
ちょっと話を聞いてみたい
●もう少しどんな会社か知りたい場合