2017年度に『月刊総務』の「総務の引き出し(広報)」に、兼任広報担当者向けに、広報の基礎知識をご紹介する連載を寄稿しました。
内容を一部加筆・修正して掲載します。
第3回社内広報の課題整理術
昨今では、社内広報について、経営理念の浸透、事業戦略の周知、強みやブランドの社内定着、モチベーションアップ、企業文化革新、働き方改革の推進など高度化した目的が設定されることもあります。
打ち手も社内報、イントラ、全社集会、対話形式のワークショップなど多様化しています。
一方、社内広報の目的の高度化や、手段の多様化が進むと、良くも悪くも「何でもあり」状態になりがちです。
経営企画や人事部門が進める組織開発との重複もあり、社内広報実務に携わる方にとって、結局、何をすべきなのか具体化しにくいという悩みも生じやすくなっています。
社内広報の基本は情報共有
社内広報は、端的に言えば会社と社員とのコミュニケーション活動です。
会社と社員との間で情報を共有し、信頼関係を構築します。
信頼関係があれば、「考えること」や「行動」が良くなるので、業績向上につながります。
経営の方向性を社員に共有できれば、社員は行動しやすくなり基盤ができます。
逆に、最前線の社員たちが競合の新しい動きを掴んだ場合、その情報を会社に共有できれば、環境変化に迅速に対応できます。
経営理念や事業戦略、あるいは課題、がんばっている社員も「情報」ですよね。
企業理念は共有されなければ飾り物。
がんばっている社員も共有されなければモチベーションアップにつながらない。
社内広報の基本は「情報共有」であり、その成果は信頼関係だと考えるとスッキリします。
知っていること・知らないこと
ここから課題整理です。
以下の観点で考えていくとスムーズです。
- 情報共有→誰が何を知っているか
- 信頼関係→社員の、会社に対する評価
社内広報の課題整理は、(抽象的な表現になりますが、)「外と内をセットにして検討する」と良いです。
自分自身のことを客観視するのは難しいからです。
まずは①情報共有です。
始めにいわゆるステークホルダーを洗い出します。
十把一絡げで構いませんので、「お客さま」「株主」「近隣の方」「お取引先様」「学生」「社員」などを挙げます。
このステークホルダー別に、「知っていること」「知らないこと」を考えます。
本当はどれぐらい何を知っているのかは、調査をしないと分かりませんが、まずは「考える」だけで十分です。
次に、「社員」を細分化します。
役職別、部門別、拠点別・・・といった具合に、属性を設定し、それぞれ「知っていること」「知らないこと」を検討します。
表計算ソフトを使って一人で考えたり、複数人で付箋を使いながら出し合ったりすると良いでしょう。
ステークホルダー分析と言いますが、これだけでも多くの課題を再認識できます。
できていること・できていないこと
この作業をすると、会社と社員とのコミュニケーション活動で「できていること」「できていないこと」が浮かびあがってきます。
たとえば、社員と情報共有できていないものは、多くの場合、社外に対する広報活動もあまりできていません。
そもそも広報担当者が、社内にも社外にも広報できるほど十分に情報を収集できていない、現場との関係を築けていない、広報の理解が浸透していない、といった課題が見えてくることもあるでしょう。
課題整理の作業で理想を言えば、経営の方向性や経営課題から知ってもらうべきことを考えていく、という流れになります。
ただ、この流れで発想すると、「コミュニケーション」ではなく会社から社員への一方的な情報「伝達」の課題に限られてしまいがちです。
コミュニケーションは双方向で成り立つもの。
会社から社員への情報「伝達」も必要ではありますが、その情報を社員が理解し、納得し、共感しなければいけません。
「伝達」と「共有」は違うのです。
また、会社から社員への一方通行だけでなく、社員から会社への情報の吸い上げも必要です。
最初から、「何を知ってもらうべきか」を考える場合は、発想が一方通行になりがちなことに注意しましょう。
社員が知っていること・知らないこと、社内広報でできていること・できていないことを検討したアウトプットが、「社員に知ってもらうべきことは何か?」を考えるインプットになります。
ぜひ取り組んでください。
会社をどう評価しているか
情報共有の次は②信頼関係です。
これは社員が、会社をどう評価しているのかを把握していきます。
アンケート調査が必要です。
なお、前回の締めくくりで、「社外広報の優先順位付けをするためにはアンケート調査が有効で、この調査は社内広報の課題整理と関連する」とお伝えしました。
情報共有の課題整理と同じように、「外」と「内」をセットで考えていきます。
調査では、「知ってもらうべきこと」は社員がどの程度知っているのか、社員が抱く会社のイメージはどのようなものか、社員は会社が十分に情報を共有してくれていると感じているのか、といった実態を把握します。
社員満足度調査や組織診断を実施している場合は、その結果から確認しても良いでしょう。
単なる実態把握から一歩進めて、より課題を見出しやすくする調査設計のポイントをご紹介します。
ここでは、会社に対するイメージを例にしますが、知っていること(認知)や評価を尋ねる場合も左のように多面的に測定することが大切です。
- 自分が会社に対して抱くイメージ
- 外部の人に抱いて欲しいイメージ
- 外部の人が実際はこう思っているだろうと考えるイメージ
これらは社員を対象にしますが、あわせてお客さま等の外部の方を対象に、
- 自社に対するイメージ
を調査します。
「思っている以上に知られていないこと」や「思ってもみなかった強みやイメージ」が明確になります。
社外・社内広報の課題をま両方とも明確にでき、活動の優先順位を決めやすくなるわけです。
●ひとまずどんな人たちか会ってみたい場合
ちょっと話を聞いてみたい
●もう少しどんな会社か知りたい場合