2017年度に『月刊総務』の「総務の引き出し(広報)」に、兼任広報担当者向けに、広報の基礎知識をご紹介する連載を寄稿しました。
内容を一部加筆・修正して掲載します。
第2回社外広報の課題整理術
どのような仕事でも目的が大切と言われます。
たしかに、目的が明確なら適した手段を選択できます。
仕事の意義も実感でき、業務に取り組む姿勢が前向きになります。
目的を考えることって難しい
ただ、実際には、手段がある程度固まっている方が目的を考えやすいことってありませんか。
たとえば、工場周辺地域の方を対象にイベント企画があるとしましょう。
この場合、イベントの目的は地域の皆様に親近感を持ってもらう等が浮かびます。
地域イベントという手段の「枠組み」があるからこそ目的が考えやすくなる。
考えた目的に応じてイベント内容を具体化していく。
このように、実は、仕事で目的を考えるとき、具体的手段から抽象的な目的を考え、もう一度、手段に落として詳細を詰めていく、という流れが多いのです。
活動全体の目的を、何もない状態から考えることは、難しいものです。
それは、「普段の目的を考える流れ」と異なるからです。
たとえば、社外広報、社内広報の目的は何かと問われて、すぐに回答が浮かぶでしょうか?
広報を総務に置き換えて「総務の目的は?」と問われた場合でも、すぐに返答できるでしょうか?
総務のプロはスムーズに返答できるかもしれませんが、新任担当者にとっては難しいことでしょう。
目的は経営戦略・計画と結び付けていくとよいともよく言われます。
ただ、経営の視座で俯瞰することも実際には難しいことです。
マネジャー層であっても、経営の視座で俯瞰して考えることができる人・できない人に分かれます。
事業部長層でようやく経営の視座で俯瞰できる。
理想論をもとに「最初に広報の目的を、経営的観点から考えていきましょう」とお伝えしても、あまりにも抽象度が高くて「目的自体をどう考えてよいのか分からない」状態になってしまうはずです。
もちろん、目的を考えなくてよいというお話ではありません。
「兼任広報」で時間もなく不安も多いのですから、目的を考えること自体をストレスなく進めましょう。
目的は、手段の枠組みがある方が考えやすくなります。
だからこそ、具体的手段の現状と課題を洗い出していくことが出発点。
今回は「社外広報」に絞って、目的を考えやすくなる課題整理術をご紹介します。
誰かに何かを知ってもらう
社外広報は、「誰かに、何かを知ってもらう」ことが基本です。
その成果として「印象・評価が良くなる」「お客様の購買や口コミ等の行動が増える」を目指すものに大別できます。
前者が信頼形成を目指す「コーポレート・コミュニケーション」、後者が販売促進を目指す「マーケティング・コミュニケーション」といったりすることもあります。
いずれも、業績や企業価値向上が最終目的です。
つまり、業績や企業価値向上という経営の大目的に対して、信頼形成、販促支援といった2つの小目的があり、「誰かに、何かを知ってもらう」ことが達成手段となります。
なんとなくスッキリしたとは思いますが、実務上はまだまだ抽象的ですよね。
もっと手段の枠組みを小さく・細かくしていきましょう。
広報は課題が目的になりやすい
目的を最初から考えるのではなく、まずは現在の広報活動・ツールを棚卸してください。
棚卸した活動・ツールの現状を評価し、課題を整理していくと、小さな目的が見えてきます。
最初は大変ですが、後でラクをするために、この作業はとても有効です。
まずは活動・ツールの棚卸。
主管業務に限定せず他部署の活動・ツールもすべて対象にします。
会社案内、ホームページ、パンフレット、営業ツール、採用ツール、プレスリリース、記者向け勉強会等、社史や社内報も社外に配布しているなら含めます。
棚卸した活動・ツールを、以下の視点で評価します。
- (主に)誰を対象にしたものか
- どんなときに使われたり実施されたりしているか
- 何を発信できているか
- 何を発信できていないか
表計算ソフトで表にすると良いでしょう。
たとえば、会社案内やホームページは必ずお持ちのはずです。
現状の会社案内やホームページを「誰に、何を知ってもらうことができているのか」「逆に、何を知ってもらうことができていないのか」等を確認していくと、たいていは「強みや魅力を表現できていない」という課題が見えてきます。
広報では、こうして見えてきた課題こそ、そのまま目的として設定しやすい。
この例で言えば、「強みや魅力を知ってもらう」ことが、会社案内やホームページの新たな目的となります。
従来の会社案内やホームページは基本情報をお知らせすることが目的だったのではないでしょうか。
広報の専門知識をお持ちでない方は、課題整理を通じて目的が見えてくる場合がとても多いです。
最初から目的を考えるのではなく、具体的な活動・ツールの現状評価と課題整理から、目的を明確にしていく方法をおすすめします。
いくつかの細かな目的が見えた段階で、もう一度、手段の内容を検討しましょう。
先ほどの例で言えば、「強み」や「魅力」とは具体的に何でしょうか?
他の媒体や活動では発信できていますか?
どの媒体・活動でも発信できていない、強みや魅力が何かを具体的にできないのであれば、そもそも強みや魅力は何なのかを明確にしないといけない、という直近の作業まで見えてきます。
「誰に」「何を」(ここでは強みや魅力)を特定できたら、専門知識がなくても戦略的な発想ができるようになります。
たとえば、会社案内は対面で、ホームページは「マス」に非対面で閲覧されますね。
対面活用が多い会社案内は「人」の魅力が伝わるエピソードを中心にしよう、ホームページは他社と比較されやすいから、他社との違いをもっと訴求しよう。
このように最低限の労力で、ムダがなく、効果を最大化する全体像を考えることができるます。
まずは網羅的に課題を整理することで目的が見えてきます。
目的が見えると優先順位を付けやすくなります。
ここでアンケート調査を実施するとさらに良いです。この調査は、社内広報の課題整理にも関連しますので、次回、ご紹介します。
●ひとまずどんな人たちか会ってみたい場合
ちょっと話を聞いてみたい
●もう少しどんな会社か知りたい場合