2020年度に『月刊総務』の「総務の引き出し(広報)」に、広報の基礎知識をご紹介する連載を寄稿しました。内容を一部加筆・修正して掲載します。
広報の実務に活かせる経営・組織分野のフレームワークやチェックリストなどの「ツール」を紹介する連載です。今回は、社内広報の企画に活かせる「組織の発展段階モデル」です。
社内広報担当者の悩み
私は広報のマネジメント分野のコンサルティングを行っていますが、社内広報活動全体の見直しや調査のご相談が増えています。ご相談をいただくと、まず社内広報の目的や課題をお伺いします。ほとんどのお客さまは、社内報など個別の媒体の発行目的は設定しています。ところが、会社としての組織課題が何か、換言すると(社内報といった個別の媒体ではなく)社内広報活動全体の目的がはっきりしていない場合が多いです。
たとえば、社内報の発行目的として多いのは・・・
- 社員に会社の動きを知ってもらう
- 社員のモチベーションアップを図る
- コミュニケーションの活性化につなげる
―など。
これらは、会社と社員との間に信頼関係を構築するためにも、とても重要なことです。
ところが、本来、社内報などの媒体は、何らかの課題を解決したり、目的を達成したりする手段です。だからこそ・・・
- なぜ、社員に会社の動きを知ってもらう必要があるのか?
- なぜ、社員のモチベーションアップを図る必要があるのか?
- なぜ、コミュニケーションの活性化が必要なのか?
と問い直しをする必要があります。
組織の発展段階モデルを活用しよう
では、「組織課題が何か?」を考えて問い直してみましょう!・・・と、言われても、自分自身の感覚に頼った答えは浮かんでも、その答えに妥当性があるのか自信が持てない。私も、実務担当者だった時、この不安がありました。社員に対する意識調査をしていれば、それを材料に検討しやすい。でも、こうした調査をしていない場合もあります。何か、方向性を掴める材料があると良いですよね。
そのような時におすすめしたいものが「組織の発展段階モデル」です。
組織は人間と同じように段階的に成長(発展)します。この発展段階に応じて、直面しやすい組織課題と解決方策を整理したものが「組織の発展段階モデル」です。様々な研究者がモデルを提唱していますが、ここでは複数の論者の視点を採用したリチャード・ダフトさんのモデルを見てみましょう(図1)。図の「踊り場」の時が、組織に変化が必要な時期。組織課題と言えます。踊り場を脱した右肩あがりのところに記載しているものが組織課題の解決方策です。

組織は、起業から間もない段階は、創業者や創業メンバーの独自技能を活かして発展します。属人的な技能で成長していくので、「創造性による解決」と言えます。
成長が続くと何人か採用して、一定人数の「共同体」になります。社員が増えれば当然、会社に対する期待や仕事に対する考え方が異なる人も出てくる。創業者や創業メンバーは、独自価値を創造・提供するだけでなく、組織をまとめる必要に迫られます。これがリーダーシップの必要性であり、明確な方向性の提示による解決が図られます。もし、十数人単位のベンチャー起業で社内広報を強化する場合、まずは経営トップの考えを浸透することが必要だと言えます。
さらに組織が大きくなると、創業メンバーだけでマネジメントできなくなります。管理スパンを小さくするために、中間管理職を配置します。すると、権限移譲の必要性が生まれる。これに対応するために、稟議や会議などの「内部システム」が増えるわけです。権限移譲の必要性に直面している組織であれば、内部システムの必要性を丁寧に解説したり、権限移譲が進み活躍している管理職や職場を紹介したりすることが考えられます。
次に、稟議や会議が定着すると組織が「公式化」します。考え方や判断が官僚的になっていく、いわゆる「大企業病」です。よく言えば、役割分担が機能して円滑に組織を運営できているのですが、縦割りがひどくなると考え方が硬直化して変化に対応できなくなる。そこで、全社横断のプロジェクト制度を導入するなど、チームワークを発達させようとします。この段階では、部門連携の取り組みを紹介したり、各部署の取り組みや課題を紹介したり、現場の情報を吸い上げたりするなどチームワークの発揮を後押しすることが考えられます。
ところが組織は次第に、チームワークの取り組みにも「新鮮味」がなくなる。プロジェクト制度が形骸化することもよくあるでしょう。そこで再活性化の必要性に迫られます。組織は分社化・グループ化をしたり(整理統合)、さらなる規模拡大を目指したり、変化に対応できず衰退していったりします。整理統合やさらなる規模拡大であれば、変革の趣旨・取り組みを丁寧に発信したり、不安を払拭したりする社内広報が必要になります。 組織の発展段階モデルは、広報の実務書や教科書には載っていない、実務に役立つツールです。これを使えば、たとえばなぜ会社の動きを知ってもらう必要があり、知ってもらうべき会社の動きとは何かを明確にしやすいはず。モチベーションやコミュニケーション活性も切り口を明確にできるでしょう。