広報に関連する基礎知識【第3回】リスク管理の落とし穴を埋める

2018年度に『月刊総務』の「総務の引き出し(広報)」に、広報の基礎知識をご紹介する連載を寄稿しました。
内容を一部加筆・修正して掲載します。


 前回は、総務と広報がリスク管理で連携できないと、思わぬ「落とし穴」ができてしまうとお伝えしました。「落とし穴」とは、不祥事や事故が発生した場合に、マスコミや社会から批判の対象になる「初動の失敗」「隠ぺい体質の疑い」「不誠実な意思決定」の3つです。今回は、この「落とし穴」を埋める方法をご紹介します。


初動対応の失敗を防ぐ

米国同時多発テロなど危機的状況での人間行動を綿密に取材したアマンダ・リプリーさんは、著書『生き残る判断 生き残れない行動』の中で、人は危機に直面すると驚くほど「否認」するとしています。「否認」の次に「思考」「行動」と移行することは、災害時の「逃げ遅れ」など災害心理学の研究でもよく指摘されます。人は、想定外の事態を前にすると、「たいしたことはない」と考えてしまったり、思考自体が停止してしまったりします。いわゆる「真っ白」な状態です。

企業は、緊急時にこうした事態が発生しないよう、危機管理マニュアルに必要な初動対応を書き込むことがあります。さらなる備えとして、シミュレーション訓練を実施する企業もあります。残念ながら、こうした対処をしていても、本当に危機が起きると、行動できない社員は多いのです。

初動対応の失敗は、人為的ミスばかりではなく、「動けなかった」場合があります。この落とし穴を埋めるためには、緊急時の行動心理を、社員全員が学んでおくことが大切です。否認・思考・行動の心理状態が生じやすいことを知っているだけで、緊急時に自分の状態を客観視しやすくなり、この移行スピードを格段に上げることができます。


結果的に隠ぺいが疑われる事態を防ぐ

事故などの緊急事態は現場の第一線で発生することが多いです。このため、現場から情報が上がってこなければ、本社や本部は必要な対策を検討できません。この情報ルートにも思わぬ落とし穴があります。

たとえば、危機管理マニュアルの報告フローが、平時と同じピラミッド型となっている場合があります。第一発見者はまず現場リーダーに報告し、現場リーダーが管理職や役員、リスク担当部署に報告し、必要に応じて対策本部をつくる、といった流れが一般的です。ところが、現場には常に現場リーダーがいるとは限りませんし、管理職・役員がすぐに捕まるとも限りません。忠実な正しい社員ほどマニュアルに沿って報告しようとし、上司がいないときは一生懸命上司に連絡しようとして他への報告が遅くなり、結果として対応が遅れてしまうことがあります。

これに対処するためには、現場と本部の双方で「断片的情報でもよいから早く報告する」、「ライン報告のルールは遵守する必要がない」ことを「バイパスルール」として共通認識にしておくことが必要です。

また、人は「悪い情報を伝えたがらない」ものです。どんなに小さなミスでも、上司に報告するのは気が重いですよね。心理学ではMUM効果(「静かにする」の意味)と言われているもので、緊急時には「そもそも正しい情報が流通するとは限らない」のです。

このため、報告を受ける側の管理職や役員は、正しい情報が伝わってきていない前提で、現場の報告を「健全に疑う」ことが大切です。 平時から、緊急時には「バイパス報告OK」や「現場の報告はちゃんと疑う」といった価値観をつくっておかなければ、対処に遅れたり誤ったりして、結果的に隠ぺい体質を疑われてしまう事態になってしまうことがあります。


不誠実な意思決定を防ぐ

倫理学の研究で、ひとは「倫理的な意識をもっていたとしても、実際にそのとおりに行動できるとは限らない」という研究分野(行動倫理)があります。倫理的で誠実な人ほど、危機に直面すると、社会の常識とはかけ離れた社内にとって「誠実な」意思決定をしてしまうことがあります。

たとえば、様々な失敗から学ぼうとする失敗学の畑村洋太郎さんは、判断者を取り囲む「気」(社会的雰囲気)の影響は無視できないと言います。スペースシャトル「チャレンジャー号」の爆発事故は、不具合が起きており事故は予測できたものでした。ところが、この事故は、米大統領演説の直前でリビア攻撃が準備されていた時期に起きており、畑村さんは誤った判断の背景に、国威発揚という「気」があったと言います。当然、社会的雰囲気だけでなく、「組織的雰囲気」の影響も考慮が必要です。過去の企業不祥事で、有名企業の経営者が「なんでそんな判断をしたのか」と信じられない思いを抱いたことはないでしょうか。どれほど誠実で倫理的な人でも、そのとおりに行動できるとは限らないのです。

この対処には、自分たちの企業文化を自覚することが不可欠です。たとえば、顧客第一主義を謳っている組織でも、実際には売上至上主義で自社都合の判断基準が浸透していることもあります。平常時は、この価値観が会社の業績アップに貢献しているとこともありえるでしょう。ただし、この企業文化に無自覚な状態だと、緊急時に自分たちは顧客第一で判断していると考えがち。無自覚が一番怖いのです。

また、平時から、他社の不祥事事例を「活用」し、ケース討議を積み上げておくと良いでしょう。他社事例を題材にして自社で起きた場合はどのような判断をすべきかを考え、かつ、その判断理由は何かを一件ずつ積み上げておきます。緊急時に、ケース討議で、落ち着いた状態の時に自分たちが判断した結果と理由を参照できるので、「他社はこうだったけどウチは違う」という逃げ道を無くすことができます。

このように、危機発生時の初動、情報流通、意思決定・判断そのものが、実は危機発生時のリスクです。このリスクを顕在化しないように、総務と広報で連携して、こうしたリスクの芽を摘んでおきましょう。

広報に関連する基礎知識【第2回】総務のリスク管理と危機管理広報の違い

2018年度に『月刊総務』の「総務の引き出し(広報)」に、広報の基礎知識をご紹介する連載を寄稿しました。
内容を一部加筆・修正して掲載します。


 企業のリスク対応力強化には、総務と広報で密な連携が必要です。ところが、総務と広報では「リスクの捉え方」が異なり、うまく連携が進まないことがあります。総務の引き出しとして、危機管理広報の知識を得ておくと、連携が進みやすくなることでしょう。今号から数回に分けて、総務担当者の目線を意識しながら、危機管理広報について解説します。

広報部門のリスクの捉え方

 総務担当者にとって、「リスク管理」は常に重要なテーマです。総務では、施設などハードのリスク対応が中心になります。総務が全社大のリスク管理委員会等の事務局を主管している場合は、より包括的かつ長期的な視野でリスクを棚卸し、優先順位を決めて、発生を防止する施策を実行します。総務にとって、リスクは「発生させないもの」「管理するもの」です。

 一方、会社に独立した広報部門がある場合は、緊急時のメディア対応判断は広報部門が担います。緊急時に迅速かつ適切な情報開示を行うため、広報部門では平時から記者会見のトレーニングをしたり、他社の危機事例から発表用資料の素案を事前に作成しておいたりします。広報は、マスコミの情報から、他社の不祥事や不正、事故などの情報を毎日のように目にしています。このため、広報はリスクを「発生するもの」と捉えます。

 経営者は、会社や自分の身を守るために、総務と広報で密に連携してリスク対応の強化を図ってほしいと期待していています。ところが、総務と広報は、リスクの捉え方の違いから「すれ違い」が生じがちです。総務からすると、広報はリスクが発生するスタンスで訓練・評価をするので、総務のリスク管理の抜け道を探す「散らかす存在」に見えてしまいがちです。一方、広報から見て総務は、リスク発生後のことを考えていないように見えてしまうので、総務の取り組みを「実効性がない」と評価しがちです。

 経験則では、こうした認識のすれ違いは、大企業よりも中堅規模の企業の方が発生しやすいです。大企業は、そのネームバリューから、リスク発生後の対処(危機管理広報)の重要性を強く認識しています。また、日常的に社内の至るところで大小のリスクが発生しているため、リスクは発生するものという思考回路ができあがっています。一方、中堅規模になると、社内でリスク対応の経験が少ないため、どうしても観念的になりがち。観念的になると、リスク管理を総務が見て、クライシス対応を広報が見るというように、役割分担をハッキリさせる方向で整理をしがちになります。(リスクとクライシスの違いは図表を参照ください。)

時間軸で見た危機の4段階

総務と広報の溝を無くすべき

 総務と広報の取り組みが分断されていると、思わぬ「落とし穴」ができてしまいます。この「落とし穴」とは、不祥事や事故が発生した場合に、しばしばマスコミや社会から批判の対象になる「初動の失敗」「隠ぺい体質の疑い」「不誠実な意思決定」の3つです。

 広報の関心事は「緊急時のメディア対応や情報開示を、いかに迅速かつ適切に行うか」です。このため、広報部門では、緊急記者会見の開催基準や、会見での謝罪の仕方、会見場で悪意のある写真を撮られないようにするレイアウトの工夫、広報担当者の電話取材の対応方法など、テクニックに意識が向きがちです。こうしたテクニックは確かに重要ですが、広報が見ているのはクライシス対応のごく一部でしかない場合が多いのです。極論を言うと、広報の訓練は、事態発生後に初動の対処が適切で、隠ぺい体質が疑われるような情報の流通の不具合がなく、社内で社会目線を考慮した誠実な意思決定が行われる前提で、最後の出口部分を訓練しています。初動で情報が集まっていない段階での「ぶら下がり」の取材対応を訓練することもありますが、一般的にこうした訓練は広報担当者だけに行われることが多いです。

 一方、総務はリスクを発生させない取り組みが中心になります。リスクが発生時の備えとして、連絡ルートを構築したり、マニュアルを策定したりしますが、実態としてはそれで一安心する場合がほとんど。発生させないことを前提にする総務からすると、初動はマニュアルに沿って適切に人が動くだろう、情報流通は連絡網に沿って行われるだろう、そして、集まった情報をもとに経営者が誠実に意思決定するだろう、という希望的観測に立脚せざるを得ない側面があります。

 このように、総務と広報が密に連携できていないと、初動の失敗、社内で情報が流通せずに隠ぺい体質が疑われる、経営層が不誠実な意思決定をする、といった「肝」の部分の対処が行われないままになってしまうのです。これではリスクが発生した後、どれほど会見場のレイアウトもお詫びも適切にできたとしても、説得力がなく、かえってマスコミや世論を敵にまわすような対応になってしまいます。これは、広報の責任でも、総務の責任でもなく、広報と総務の責任なのです。リスク管理の中核をなす総務担当者が、危機管理広報のスコープを知っておくと、リスク対応力強化の落とし穴を埋めていくことができます。

広報に関連する基礎知識【第1回】広報の仕事とは

2018年度に『月刊総務』の「総務の引き出し(広報)」に、広報の基礎知識をご紹介する連載を寄稿しました。
内容を一部加筆・修正して掲載します。


 2017年4月号から2018年3月号までの1年間、総務で広報を兼任する方を対象に、効率的に広報業務を進める戦略の策定方法から、広報実務のポイントをご紹介してきました。今年度は、広報の兼務状況を問わず、まさに総務担当者が知っておくと「引き出し」のひとつになる広報分野の知識やトレンドを、ご紹介していきます。


広報って結局、なにしてるの?

 広報に係る部署は、経営企画部門に含まれることも、管理部門にぶら下がることもあります。総務が広報を兼務することも、経営直轄のこともあります。

 広報は、企業・組織のひとつの「業務」でありながら、学術分野で会社の仕事(いわば事業活動)として研究されてきました。たとえば、広報活動は、学術的には「企業とステークホルダーとの間に、良好な関係を構築・維持する活動」などの定義付けがされています。ただ、ステークホルダーとの関係構築は、営業、人事、総務など、ほとんどの経営活動はこれに帰結してしまいます。現に、多くの会社で広報部門は、マスコミや一般社会との関係構築に係る業務は担っていても、顧客は営業、監督官庁は総務、というように関係構築業務は全社で分掌されています。その意味では、「ステークホルダーとの関係構築」は、会社の仕事として「広報」を捉えてはいるものの、広報部門の業務をうまく説明するものにはなっていません。

 こうした曖昧さがあるためか、経営活動をモデル化したフレームワークで、広報活動が含まれることはほとんどありません。たとえば、経営管理活動の種類やプロセスを整理したファヨールや、ポーターの「バリューチェーン」は有名です。総務に関しては、ファヨールは「保全活動」、ポーターは「全般管理(インフラ)」に位置づけていますが、広報活動は一切言及されていません。ファヨールの時代は広報が確立していなかったと見ることもできますが、ポーターにとっては「眼中」にも入っていなかったか、あるいは、経営企画業務と同じように、事業活動というより経営と一体のものだと認識されたのかもしれません。

 広報が大事だというのは肌感覚で誰もが実感します。企業・組織の規模が一定になれば必ず何らかの広報業務が経営活動に組み込まれたり、部署ができたりします。総務が広報と連携したり、総務が広報を兼務したりすることもあるのに、どうにも業務の位置づけが掴みにくい状態では、連携や実務を進めにくいですね。まずは広報の位置づけを、総務の「引き出し」として知っておきましょう。


広報業務の位置づけ

企業不祥事研究を行う井上泉氏は、近著『企業不祥事の研究』で、経営活動のプロセスを大きく「意思決定」「情報伝達」「事業活動」「情報公開」の4つに分解しています。これは、総務、研究開発、営業といった活動の種類を整理するのではなく、経営の実行プロセスを時系列で整理したものと言えるでしょう。経営そのものの流れがとてもシンプルに整理されており、積極的な情報開示が求められる現代にフィットします。広報業務が経営にどう関連付いているのかも、理解しやすい枠組みです(図)。

経営の4つのプロセスで見た広報業務

 経営における意思決定は、株主総会や取締役会、各種委員会などで行われます。広報は、外部情報の収集など広聴も行っています。広聴業務とはまさに「広く聴く」こと。アンケートだったりヒアリングだったりソーシャルメディアの書き込みだったり、一般社会の代弁者としてマスコミの声を聴いたりします。外部から情報を受信し、経営にフィードバックする業務を行っています。

 また、経営が意思決定したことは、組織内部に情報伝達しない限り、実行されません。社内広報業務はここに位置づけることができます。方策としては社内報やイントラ、対面でのワークショップなどが挙げられます。

 事業活動の断面では、成果が最大化するように、いわゆるPR活動やHPでの情報発信など社外広報業務を実施しています。ここでは知名度の向上や信頼獲得などが成果として期待され、各事業活動の実行を側面支援しています。

 情報公開では、(主管部が広報ではなく総務やIRのこともありますが)財務・非財務の報告業務やステークホルダーとのダイアログ、渉外、何か不祥事が起きたときは誠実で適切な情報開示を行っています。


 この枠組みでみると、広報業務は経営活動の全プロセスに密接に関わっていることがイメージできます。広報業務は、経営が企画したことの実行力・実現可能性を上げる仕事をしていると言えます。組織規模が小さければ事業活動の一部として対外的なPRをしているだけで十分かもしれませんが、組織が大きくなるほど意思決定のために収集すべき情報は多くなり、組織内部への密な情報伝達が必要になり、社会的責任を果たすための情報公開も必要になります。

 広報は、目的や目指す活動といったん切り離して、経営の実行プロセスに沿って位置づけていかないと、何をしているのか理解が進みにくいのです。もし総務が広報を兼務している場合は、経営からは、事務業務でなく企画業務に近い期待値があるはずですので、業務遂行で留意しましょう。総務で広報と連携が必要な場面があったら、どのプロセスでの連携が期待されているのかを適切にとらえていきましょう。

兼任広報担当者向け広報基礎知識-8 広報活動の実践にあたり

2017年度に『月刊総務』の「総務の引き出し(広報)」に、兼任広報担当者向けに、広報の基礎知識をご紹介する連載を寄稿しました。
内容を一部加筆・修正して掲載します。


第8回広報活動の実践にあたり

これまで、兼任広報の方に向けて、広報業務を効率化するための計画づくりや広報ネタの発掘法をご紹介してきました。あとは「実践あるのみ」。パブリシティ活動(プレスリリース等)やホームページ、社内広報など広報活動の実践にかかわるポイントを今後ご紹介していきますが、今号では、個別の活動をご紹介する前に少し俯瞰して、近年の広報活動の変化をお伝えします。


従来の広報はマスコミ対応中心

経済広報センターが行っている『企業の広報活動に関する意識実態調査』では、広報部門の担当業務を尋ねています。調査対象・回答企業は大手かつ専任部署がほとんどですので、兼任広報の方にとっては少し縁遠く感じるかもしれませんが、近年の変化を読み解く材料としてご紹介します。

この調査の結果では、広報部門の担当業務は、報道対応や社内広報がほとんど。これに危機管理、広告・宣伝活動、社外情報の収集が続いています。


目的が高度化し手段も複雑化

08年と14年の結果を比較してみましょう。報道対応はあまり変動していません。一方、社内広報、危機管理、ブランド戦略の推進、CSR対応は増えています。

同調査で自社ホームページの目的を尋ねた結果では、「自社製品・商品の販売、取引の拡大に役立つ」といった販促支援は減少し、「企業理念やスタンスを伝えること」が増加を続けています。

広報部門の業務が、従来の報道対応(マスメディアとの関係構築)から「企業ブランディング」に高度化していることが分かります。


情報への接触スタイルの変化

広報業務が企業ブランディングに高度化する背景には、ホームページやSNSなどデジタル領域で、自社が独自に情報発信できるツールが登場したことと、この数年でマスメディアの影響力低下が顕著になってきていることの2点があります。後者を補足します。

NHK放送文化研究所の「2015年国民生活時間調査」では、テレビ、新聞に接する人が急激に減り始めていることが確認できます。新聞はとくに顕著で、全回答者のうち、1日のうち新聞に15分以上接する人の割合は、95年には約半数の52%でしたが、2015年には33%に減少。テレビも、新聞より割合が高いものの、92%から85%に低下しています。これは、言わずもがな、スマートフォンの利用者増などインターネット環境の変化によるものです。

この影響で、実は人間の「注意力」も低下しています。米国のナショナル・センター・フォー・バイオテクノロジカル・インフォメーションの調査によると、人間の注意力の平均持続時間は00年には12秒でしたが、13年には8秒に短くなっています。


環境変化にあわせた活動を

広報担当者は、こうした環境変化を意識していく必要があります。

社外広報に関しては、報道対応中心の頃、広報活動の評価者は、実務上は「記者」だけでした。良い記事が出ればそれだけインパクトが大きかったので、良い記事を出すために記者との関係構築に必死でした。時として社内事情より記者対応が優先されることもありました。

一方、いまではブランド訴求のために自社メディアの重要性が増しています。自社メディアでの情報発信の評価者は、記者ではなく「社員」や「お客さま」です。社外に発信するニュースバリューがあるかという判断基準だけでなく、社員のモチベーションアップやお客さまの評価獲得なども判断軸に加えていくべきです。

また、「注意力の平均持続時間の低下」は、社内外のすべての広報活動の変化を求めています。たとえば会社案内やホームページの「ご挨拶」も長文では読みません。インパクトのある写真と、お伝えしたいことをぎゅっと凝縮したコピーにまとめ上げていく必要があります。

プレスリリースでも、説明の要素は極力省き、取材して欲しいのか、告知して欲しいのか、新製品・サービス等の情報なのか、視覚的に数秒で記者に伝わるようにしなければいけません。

社内報も同様。テキスト中心ではなく、図解など目で見て分かるように工夫するビジュアル・コミュニケーションの重要性が増し続けています。

ところが、ビジュアル中心になると、どうしても「表面的」になりがち。だからこそ、社内広報で言えば「対話」などリアルなコミュニケーションの重要性が増し、社外広報でも具体的なストーリーが一方で必要になっています。

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兼任広報担当者向け広報基礎知識-7 広報ネタの発想法②

2017年度に『月刊総務』の「総務の引き出し(広報)」に、兼任広報担当者向けに、広報の基礎知識をご紹介する連載を寄稿しました。
内容を一部加筆・修正して掲載します。


第7回PRネタの発想法②

PRネタを見付ける考え方や発掘方法をは、以下の3つがあります。

  1. 発想法を活用する
  2. 埋もれているネタを見つける
  3. ネタをひねり出す

このうち、「1.発想法を活用する」は先月号でご紹介しました。今月は、2と3をご案内します。


埋もれているネタを見つける

埋もれているネタを探す最重要ツールはイントラネットです。

多くの会社で、イントラネットを導入していることでしょう。
イントラネットは、社員が社内の人に知って欲しいと思って多くの情報が掲載されています。
ネタの原石がたくさん。
閲覧権限を有する範囲の情報は、必ず「すべて」に目を通すべきです。
日々の仕事に追われて「時間があるときに見よう」ではなく、毎日、時間を決めてすべてに目を通しましょう。

部門ごとに閲覧権限が限定されていて情報にアクセスしにくい場合は、閲覧権限の付与を該当部門と交渉しましょう。

該当部門には、「社内外のPRネタになるのかを確認したい。勝手に社内外に発信するようなことはしないし、必ず事前に相談する」などと言えば、意外とすんなりとOKをもらえるものです。

情報のアクセス制限は、情報管理を徹底するために行われます。
多くの社員が、必ずしも業務上必要でない情報に接触できる状態は、情報漏えいの可能性が増してしまいます。
逆に言えば、広報の仕事は、多くの情報にアクセスできないと、何も始まりません。
業務上必要なのですから、正々堂々とアクセス権限を要求しましょう(もちろん社内ルールに則って手続きをしたり、理由書のようなものを作成してマネジャーに調整してもらったりする等の工夫は必要です)。

イントラ自体が情報共有ツールとして活用されていない、あるいはイントラを導入していない場合は、稟議や各種会議での審議・決裁事項を確認しましょう。


社内ぶらり歩き

イントラや稟議等の情報から、発信できそうなネタがいくつか見つかったとしましょう。

イントラであれば投稿者、稟議や会議情報であれば起案者や報告者が「情報源」になります。
ところが、実際には「よさそうなネタだな」と思っても、全部のネタを社内取材することは時間・労力を要して困難です。
また、社内取材に「及び腰」になってしまうこともあるでしょう。

そこでおすすめしたいのは、「社内をぶらつく」ことです。

情報源を頭の中に入れておき、食堂や廊下などオフィス内の至る所をぶらぶらします。

担当者とすれ違うたびに、「あの話、ネタになりそうですね。珍しいんですか?」などと話しかけていきます。

反応を見極めながら、相手が社外発信に対して乗り気であれば「詳しく聞かせてください。あとで日程調整のご連絡をします」と、ヒアリングに持ち込みましょう。

社内広報・社外広報問わず確実にネタを拾っていくことができます。
立ち話の際に、相手の反応や話の内容から、ネタになりえるのか取捨選択をしていくこともできます。

いわゆる「足を使う」ことが大切です。


社内アンケートも有効

兼任広報で時間がなく、こうしたネタ掘り活動をできない場合は、社内アンケートをして、「PRネタの有無」を聞いてしまいましょう。

社内広報であれば取り上げてほしいこと、社外広報であれば発信してほしいことをアンケートで尋ねます。
プロの新聞社や専門雑誌でも、企業向けにアンケートを実施して、その回答内容から取材先を固めていくこともあります。
大手企業であれば、働き方改革、ダイバーシティの取り組み等について、媒体からアンケートが来ることも多いことでしょう。
それと同じです。

社内アンケートをすると、数人でも提案してくれる人はいます。

提案してくれた人には、仮に「これはネタにならない・・」という提案内容だったとしても、必ずヒアリングをしましょう。
接点を持っておけば、その人の所属部署や知人などのネットワークを活用しやすくなるからです。

こうした「とりあえず社内アンケート」は、広報兼務者にとって、手っ取り早く情報が集まり社内人脈も拡がるので有効です。


PRネタをひねり出す

社内アンケートを一工夫することで、PRネタを「ひねり出す」こともできます。

とくに、広報に力を入れてこなかった会社の場合、「何かネタありませんか?」と尋ねても、社員の側はいったい何がネタになるのかイメージがわきにくいこともあります。

そこで、競合他社のプレスリリースや露出状況、ホームページコンテンツなどを見てもらいながら、「似たようなネタはありませんか」「もっと進んでいる取り組みはありませんか」という尋ね方をします

すると、より具体的で焦点が絞られたPRネタがたくさん出てきます。

カンの良い人は、競合と自社との違いを踏まえて、ネタの切り口をどうすべきかまで提案してくれます。

経験則では、企画系の部署の人が、切り口も含めた提案をしてくれる傾向があるように感じます。

企画系の人は、企画が実践されて成果が出て評価されますので、広報のためにネタを提供するのではなく、自分の成果創出につなげるために「広報を使う」という発想に結び付きやすいのだろうと思います。

こうしたネタのひねり出しは、丁寧な競合調査が必須。

この競合調査だけでも広報のヒントも多く得られます。

ぜひ実践していただきたいアプローチです。

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兼任広報担当者向け広報基礎知識-6 広報ネタの発想法①

2017年度に『月刊総務』の「総務の引き出し(広報)」に、兼任広報担当者向けに、広報の基礎知識をご紹介する連載を寄稿しました。
内容を一部加筆・修正して掲載します。


第6回広報ネタの発想法①

前号までに、広報兼任の方が効率重視の広報戦略を考える方法をご紹介してきました。ところが、「そもそも広報するネタがない」という悩みもありませんか。兼任では時間・労力に限りもあり、ネタの掘り起こしまでなかなか手が回りません。そこで、今号から、広報ネタの考え方や発掘方法をご紹介します。


あなたもネタハンターになれる

私は、ある組織で広報実務を担当していたとき、組織内で「ネタハンター」と呼ばれていました。ネタを嗅ぎつける能力を有しているという意味です。記者の仕事をし、PR会社にもいたので、経験上、その情報が広報ネタになり得るのかどうか、直感的に判断しやすかったのは確かです。

実務を離れ、コンサルテーションや講師を行う立場に変わってから、自分自身がネタハンターと呼ばれるまでに何をしたのかを振り返って整理しました。その結果、こうした「ネタハント」業務は、一定の標準化が可能で、スキルとして獲得可能な技能だと考えています。

ネタハントの方法は、3つあります。

  1. 発想法を活用する=何がネタになり得るのかを習得する
  2. 埋もれているネタを見つける=イントラなどの社内公開情報を基にアタリを付けて足を使って掘り起こす
  3. ネタをひねり出す=競合他社の動向を調べて、同じようなネタがないかを尋ねまわる

今回は「1.発想法」について詳しくご紹介しましょう。


広報ネタの発掘=発想法を活用する


「経営資源」こそが広報ネタになり得るものです。

経営資源は、①ヒト、②モノ、③カネ、④情報の4つを指すことが一般的です。

これに沿ってネタを考えていく「発想法」が、一番、ネタの棚卸が容易です。ネタ発掘のセンスを磨いていくことにもつながりますので、ぜひ実践してみてください。


ヒトをネタにする
~ヒトを起点に切り口を考える


分かりやすいのば「経営トップ」。トップが語ればプライベートでもネタになります。

トップ以外では、社員の属性から考えます。たとえば、職位では新人、中堅、係長層、課長層、部長層、経営層があります。職歴では、3年目、5年目、10年目など。ほかにも年代、所属部署、役割(開発担当者、OJTリーダー)、プライベートの状況(結婚前、子育て中、介護中)等々、様々な属性があります。属性を並べただけでも、何が発信可能かを、考えやすくなります。

たとえば、子育てと仕事を両立している社員がいるなら、そのヒトを中心にして、周囲のサポートや会社の制度などを社内外に発信できます。

課長層に焦点をあてるなら、働き方改革など注目されやすいテーマについて、経営の要求と現場の現実に葛藤しながらも成果を出した人がいるなら、社内広報はもちろん、社外広報でもテレビ取材の働きかけさえ可能でしょう。

ベテラン社員に焦点をあてるのであれば、業界内で卓越した技術を有する人はいませんか? その人が技術を積み上げてきたエピソードも良いですし、技能標準化のためにIoT化も進めているようであれば、社外広報ネタにも発展できるはずです。


モノをネタにする
~情報価値を上げることに注力する


いわゆる新製品・新サービス情報などです。ところが、モノの情報はあふれているだけに、単に「新しい」と訴求しても注目されにくい。情報価値を高めるように加工していくことが必要です。

この場合、以下のような「切り口」を見出していくと情報価値が高まります。

  • 新奇=新しいだけでなく、珍しい部分に焦点をあてる
  • 時流=便乗できる流行があるなら便乗
  • 共同=他社との協力関係(提携等はもちろん、ウィンウィンの取り組みなど)
  • 実績=上市から●年、シェア●%達成等
  • 季節=四季はもちろん、入社、株主総会、異動など
  • 限定=このエリアでは、この業界では、この部門では等
  • 実利=おトク、使える、役立つ
  • ビジュアル=絵になる写真、目で見て分かる 等

上記の切り口の他にも、「モノを訴求しながらヒトを素材とする」ことも可能です。
たとえば開発担当者に焦点をあてる、開発から販売までのサプライチェーンに関わるヒトを紹介する、モノを使用しているお客さまに登場いただく等がすぐに浮かぶのではないでしょうか。


カネをネタにする
~おカネの話を堂々とする


経営計画や事業戦略は社内広報ネタにしやすいです。社外広報でも有効です。ただし、上場していない場合は、どこまで何を出すのかという議論が必要になることでしょう。

おカネ周りで、意外と埋もれがちなのは、生産性向上やコスト削減の取り組み。

専門紙誌の多くはこうしたネタは大好物です。もし、生産性向上の取り組みをしていて、社内報で紹介したことがあるなら、その内容を記者に情報提供するだけでも、取材してくれることでしょう。HPコンテンツとしても訴求力があります。お客さまから見れば「創意工夫ができる会社」「できるだけ安く提供しようと努力している会社」という評価につながりやすいです。おカネの話を堂々としましょう。


情報をネタにする


実は、自社がもっている「情報」もネタにできます。もちろん、保有している顧客情報をそのまま出すべきというような意味ではありません。

たとえば、テレビの特集企画で飲食店や美容などサービス業で「来店客が増えている」というようなデータを目にすることはありませんか? 自社が持つデータを広報ネタにできます。

生産財であれば、地域別・事業別の売上構成の変化など公表データから、自社が属する市場自体の変化など「業界情報」に置き換えて発信することも可能でしょう。

とくに、業界全体を語る・業界動向を解説するような情報を発信すると、リーディングカンパニーという印象づけができます(競合他社の論評は避けます)。大手の持株会社やグループ会社のホームページでは、こうしたコンテンツの発信を進めている会社も出てきています。

このように「情報」も社内外に発信可能なネタにできます。

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兼任広報担当者向け広報基礎知識-5 広報の目標設定

2017年度に『月刊総務』の「総務の引き出し(広報)」に、兼任広報担当者向けに、広報の基礎知識をご紹介する連載を寄稿しました。
内容を一部加筆・修正して掲載します。


第5回広報の目標を設定する

前回、特定分野でシェアが1位の製造業の会社を架空のケースとして、【なぜ】【何を】【誰に】【どうやって発信・共有するか】を考える手順をご紹介しました。この会社の強みは「営業担当者に技術の知識・技術があり、顧客接点の最前線で簡単なメンテナンスまでを実現できてしまう」ことにあるとしていました。引き続きこのケースに基づいて、目標設定の方法を考えていきましょう。


いつまで・どれぐらい・どこまで


この架空のケースで言えば、社外広報活動のゴールは、会社の最大の強みをお客さまに認知・評価していただくことです。
お客さまから「この会社の営業担当者は技術に詳しい」「困ったときに声をかけやすい」などと評価されることが定性的な目標となります。
この目標を定量化する場合は、お客さま向けのアンケートを実施し、以下のような設問を入れ込みます。

Q:弊社の営業担当者に対する評価をお聞かせください。

  1. 営業窓口でありながら技術に詳しいと思う(そう思う~そう思わない)
  2. 営業担当者は、困ったときに声をかけやすい印象がある(そう思う~そう思わない)

たとえば、架空のケースの会社では現在、「1.営業窓口でありながら技術に詳しいと思う」の「そう思う」割合が60%だったとしましょう。
現状の評価さえ測定できれば、この値を「70%水準に引き上げる」といった定量的な目標を設定できます。


お客さまの認知・評価を得るためには、顧客接点となる自社の社員が、自社のことを「自社の営業担当者は技術に詳しい」「自社では、お客さまが困っているときはできるだけ営業担当者の力量で簡単なメンテナンスをするように推奨されている」などと認知・評価していることが必要です。
これを捉えるために、社員向けのアンケートをとっても良いでしょう。


目標の「種類」


実際には、数値を基準にして目標を設定できる場合ばかりではありません。
目標は、数値基準を含めて、以下の要素を組み合わせて設定することが一般的です。

  1. 数値基準
  2. スケジュール基準
  3. 達成状態基準

1. 数値基準


数値基準は、先ほどの例のように60%を70%に上げる等の数値で表現するものです。
もう少し実務に近づけた目標にしたい場合は、ホームページコンテンツを6件追加する、プレスリリースや企画の提案などマスコミ向けに20回以上の情報提供をする、といった「アウトプット」で設定することが一般的です。
こうした数値基準は、【どれぐらいの規模でやるのか】を明確にするものです。


2.スケジュール基準


スケジュール基準とは、たとえば「3年間で」「1年間で」「9月までに」など、時間軸で区切ったものです。
スケジュール基準は【いつまでにやるのか】を明確にするものです。


3.達成基準


達成状態基準とは、たとえば「マニュアルが完成した状態」「マニュアルを社内周知した状態」などです。
数値での表現が難しい場合、達成状態を明確にします。
達成基準は【どこまでできれば良しとするのか】、範囲を具体化するものです。


目標は、この3つの組み合わせで輪郭が際だっていきます。
輪郭が際立てば、実務的・具体的で達成可能かつ測定可能な目標になります。
架空のケースで言えば、最終成果を目標とする場合、以下のような目標を設定できます。


架空のケースでの広報の目標の例

「お客さまの『営業担当者が技術に詳しい』という評価を、3年間で、現在の60%から70%に上げる」


進捗管理しやすい目標に


前回、架空のケースの広報戦略を考える過程で、【何を】【誰に】がはっきりすれば、出すべき情報を絞り込んでいるのに【どうやって発信・共有するか】に厚みを持たせることができるようになるとご紹介しました。
以下の活動を例示しました。

  • ホームページでは顧客接点の強みを中心に訴求して具体論として営業担当者育成を紹介しよう
  • 育成アプローチについて営業担当者の生の声を定期的にインタビューしてコンテンツにしょう
  • コンテンツの更新情報をお知らせするお客さま向けのメールマガジンをつくろう
  • 業界専門紙に営業担当者育成の取り組みを取材してもらえないか働きかけてみよう  等々

実務に近づける場合は、以下のような目標が考えられます。

  • 6月末までに、現在の広報活動の課題を整理したうえで、営業担当者育成の取り組みを社外発信する企画を立案し、上長から承認された状態
  • 9月末までに、ホームページに新コンテンツを2本アップした状態
  • 12月末までに、業界紙への情報提供を行い、取材を1回以上受けた状態
  • 3月末までに、HPコンテンツを合計3本以上アップし、メールマガジンを2回以上配信した状態

このように、【いつまで】【どれぐらい】【どこまで】の輪郭を明確にしておくと、進捗を管理しやすくなります。
業績評価で目標管理制度を導入している会社にお勤めの場合は、「兼任広報としてなんらか広報業務の目標を入れなければいけない」ということもあるでしょう。
今回の目標例を参考にしてください。

成果をベースにした目標とするか、実務ベースの目標とするかは、求められる広報活動のレベル感と兼任広報として割り当て可能な時間・労力・コストとのバランスを勘案して決定すると良いでしょう。

line1

●ひとまずどんな人たちか会ってみたい場合

ちょっと話を聞いてみたい

line1

●もう少しどんな会社か知りたい場合

サービス(何をしてくれるの?)

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兼任広報担当者向け広報基礎知識-4 広報戦略の考え方


2017年度に『月刊総務』の「総務の引き出し(広報)」に、兼任広報担当者向けに、広報の基礎知識をご紹介する連載を寄稿しました。
内容を一部加筆・修正して掲載します。


第4回広報戦略の考え方

これまで、社外広報、社内広報に分けて、課題の整理術をご紹介してきました。
これを「戦略」として体系化していきます。


戦略ってなに?


この「戦略」という言葉が分かりくいですよね。

戦略は、端的にいえば「ある目的を達成するための、中長期的なシナリオ」です。

たとえば目的が「戦に勝つ」であれば、「戦」単体の戦い方は作戦や戦術です。

戦の準備段階から、戦の後を見越して寝返りを働きかけることをしよう、必要な武器や食料を購入しよう、先にお隣の国と同盟を組んでおこう、など、中長期的の視野で複合的な施策をもとに、勝つためのシナリオを描くことが戦略です。

広報戦略については、連載の第一回で、ご理解いただきやすいように、簡略化して以下の枠組みをお示ししました。時間軸を省略しているものと捉えてください。

①なぜ、②誰に、③何を、④どうやって発信・共有するのかを明確にするものです(専門業者が得意なのは④です)。

前回までに、①について、社内・社外の広報活動の課題整理をご紹介しました。②、③、④を明確にできれば、戦略のできあがりです。


先に「何を」を考える


兼任広報の場合、できるだけ効率化しないと仕事がまわりません。

「②誰に」がたくさんあると手が回りません。
そこで、裏ワザとして「③何を」から先に考えるべきです。

図では、「②誰に」から「③何を」に矢印が出ていますが、これを反対にしたり、「②誰に」と「③何を」をいったりきたりさせて考えたりした方がスムーズです。

検討過程をイメージしやすいよう、架空の事例から読み進めていきましょう。


たとえば、あなたの会社は製造業だとします。
ある特定分野で市場シェアが1位。

これは、営業担当者が高度な技術の知識・技能を持っている、だから顧客接点の最前線で自社製品の簡単なメンテナンスができ、導入企業との信頼関係が構築されてリピート購入が多い、という強みがあるとします。

この強みのウラには、営業担当者教育でベテランと若手の徒弟制度があり、年に2回の営業担当者向け技術実習もあるとしましょう。

一方、お客さまと営業担当者、あるいはベテランと若手という結びつきが強いため、社内で若手営業担当者同士のヨコの情報共有が少ないという課題があります。

広報関係では、社外広報は、会社案内やホームページは存在するものの「会社概要」しか載っていない状態。

社内広報では、年に2回、期首の四月と期中の十月に経営幹部のメッセージを載せた社内報を発行しているだけ・・・。


ここからは、上記の架空の事例を基に、簡単に検討を進めてみます。

先に「③何を」を明確にしましょう。

自社の最大の強みである「営業担当者の技術の知識・技能と指導力」を発信・共有する、ことが一例です。

既存のお客さまは、リピート購入が多いため、この強みはよくご存知のはずです。

このため「②誰に」は、「新規開拓の対象となるお客さま」と、少し絞り込むことができます。

本来はより明確なターゲットにしたいところですが、この簡単な絞り込みだけでも、より具体的な「③何を」や「④どうやって」が考えやすくなります。

新規のお客さまは自社のことをほとんど何も知りませんので、単に「弊社の営業担当者は技術の知識があります」と説明しても伝わりません。

なぜ営業担当者が技術の知識と技能があるのか、それが本当なのかを具体的に伝える必要があります。

つまり、「③何を」は、より具体的に言えば「営業担当者育成」となります。

あとは「④どうやって発信・共有するか」です。

たとえば

  • ホームページでは顧客接点の強みを中心に訴求して具体論として営業担当者育成を紹介しよう。
  • 育成アプローチについて営業担当者の生の声を定期的にインタビューしてコンテンツにしょう。
  • とくにベテランと若手との徒弟関係のエピソードを軸にしよう。
  • コンテンツの更新情報をお知らせするお客さま向けのメールマガジンをつくろう。
  • 業界専門紙に営業担当者育成の取り組みを取材してもらえないか働きかけてみよう。 等々。

出すべき情報を絞り込んでいるのに、厚みを持たせた情報発信ができるようになります。
情報発信に一貫性が生まれますので、統一的なイメージが形成されやすくなります。


社外と社内の広報を分けない


兼任広報の場合、できるだけ焦点を絞り込んだ情報の発信・共有に集中させる方が作業を効率化できますし、成果にもつながりやすくなります。社内広報に関しても同様です。

先ほどの例でいえば、社内広報は、若手営業担当者同士のヨコの情報共有が課題でした。

ホームページは、携帯端末さえあれば誰でもいつでもどこでも閲覧できます。

ホームページで色々な営業担当者を紹介していれば、社員は移動中や待機時間に他の営業担当者の考えに触れることができます。

ホームページは社外広報媒体なのに社内広報の役割を担うこともできます。

もう少し踏み込むのであれば、若手営業担当者の何人かをホームページコンテンツ強化の「編集委員」として委嘱し、負担がない範囲で「編集会議」を開けば、ヨコの繋がりを創る契機にもできます。

加えて、年に2回の社内報で、ホームページコンテンツを再掲しても良いでしょう。

社内報はプッシュ型メディアですので、確実に目にしてもらうこともできます。

社外広報と社内広報を分けることなく、絞り込まれたテーマについて手厚く情報発信・共有をする。

広報活動に充てる時間・労力が少ない兼任広報の方こそ、こうした広報の本来のあるべき姿を実現しやすいのです。

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兼任広報担当者向け広報基礎知識-3 社内広報の課題整理術


2017年度に『月刊総務』の「総務の引き出し(広報)」に、兼任広報担当者向けに、広報の基礎知識をご紹介する連載を寄稿しました。
内容を一部加筆・修正して掲載します。


第3回社内広報の課題整理術

昨今では、社内広報について、経営理念の浸透、事業戦略の周知、強みやブランドの社内定着、モチベーションアップ、企業文化革新、働き方改革の推進など高度化した目的が設定されることもあります。

打ち手も社内報、イントラ、全社集会、対話形式のワークショップなど多様化しています。

一方、社内広報の目的の高度化や、手段の多様化が進むと、良くも悪くも「何でもあり」状態になりがちです。

経営企画や人事部門が進める組織開発との重複もあり、社内広報実務に携わる方にとって、結局、何をすべきなのか具体化しにくいという悩みも生じやすくなっています


社内広報の基本は情報共有


社内広報は、端的に言えば会社と社員とのコミュニケーション活動です。

会社と社員との間で情報を共有し、信頼関係を構築します。
信頼関係があれば、「考えること」や「行動」が良くなるので、業績向上につながります。

経営の方向性を社員に共有できれば、社員は行動しやすくなり基盤ができます。
逆に、最前線の社員たちが競合の新しい動きを掴んだ場合、その情報を会社に共有できれば、環境変化に迅速に対応できます。
経営理念や事業戦略、あるいは課題、がんばっている社員も「情報」ですよね。
企業理念は共有されなければ飾り物。
がんばっている社員も共有されなければモチベーションアップにつながらない。

社内広報の基本は「情報共有」であり、その成果は信頼関係だと考えるとスッキリします。


知っていること・知らないこと


ここから課題整理です。
以下の観点で考えていくとスムーズです。

  1. 情報共有→誰が何を知っているか
  2. 信頼関係→社員の、会社に対する評価

社内広報の課題整理は、(抽象的な表現になりますが、)「外と内をセットにして検討する」と良いです。
自分自身のことを客観視するのは難しいからです。

まずは①情報共有です。

始めにいわゆるステークホルダーを洗い出します。

十把一絡げで構いませんので、「お客さま」「株主」「近隣の方」「お取引先様」「学生」「社員」などを挙げます。

このステークホルダー別に、「知っていること」「知らないこと」を考えます
本当はどれぐらい何を知っているのかは、調査をしないと分かりませんが、まずは「考える」だけで十分です。

次に、「社員」を細分化します。

役職別、部門別、拠点別・・・といった具合に、属性を設定し、それぞれ「知っていること」「知らないこと」を検討します。
表計算ソフトを使って一人で考えたり、複数人で付箋を使いながら出し合ったりすると良いでしょう。

ステークホルダー分析と言いますが、これだけでも多くの課題を再認識できます。


できていること・できていないこと


この作業をすると、会社と社員とのコミュニケーション活動で「できていること」「できていないこと」が浮かびあがってきます。

たとえば、社員と情報共有できていないものは、多くの場合、社外に対する広報活動もあまりできていません
そもそも広報担当者が、社内にも社外にも広報できるほど十分に情報を収集できていない、現場との関係を築けていない、広報の理解が浸透していない、といった課題が見えてくることもあるでしょう。

課題整理の作業で理想を言えば、経営の方向性や経営課題から知ってもらうべきことを考えていく、という流れになります。
ただ、この流れで発想すると、「コミュニケーション」ではなく会社から社員への一方的な情報「伝達」の課題に限られてしまいがちです。

コミュニケーションは双方向で成り立つもの。

会社から社員への情報「伝達」も必要ではありますが、その情報を社員が理解し、納得し、共感しなければいけません。

「伝達」と「共有」は違うのです。

また、会社から社員への一方通行だけでなく、社員から会社への情報の吸い上げも必要です。
最初から、「何を知ってもらうべきか」を考える場合は、発想が一方通行になりがちなことに注意しましょう。

社員が知っていること・知らないこと、社内広報でできていること・できていないことを検討したアウトプットが、「社員に知ってもらうべきことは何か?」を考えるインプットになります。

ぜひ取り組んでください。


会社をどう評価しているか


情報共有の次は②信頼関係です。

これは社員が、会社をどう評価しているのかを把握していきます。
アンケート調査が必要です。

なお、前回の締めくくりで、「社外広報の優先順位付けをするためにはアンケート調査が有効で、この調査は社内広報の課題整理と関連する」とお伝えしました。

情報共有の課題整理と同じように、「外」と「内」をセットで考えていきます

調査では、「知ってもらうべきこと」は社員がどの程度知っているのか、社員が抱く会社のイメージはどのようなものか、社員は会社が十分に情報を共有してくれていると感じているのか、といった実態を把握します。

社員満足度調査や組織診断を実施している場合は、その結果から確認しても良いでしょう。

単なる実態把握から一歩進めて、より課題を見出しやすくする調査設計のポイントをご紹介します。

ここでは、会社に対するイメージを例にしますが、知っていること(認知)や評価を尋ねる場合も左のように多面的に測定することが大切です。

  • 自分が会社に対して抱くイメージ
  • 外部の人に抱いて欲しいイメージ
  • 外部の人が実際はこう思っているだろうと考えるイメージ

これらは社員を対象にしますが、あわせてお客さま等の外部の方を対象に、

  • 自社に対するイメージ

を調査します。

「思っている以上に知られていないこと」や「思ってもみなかった強みやイメージ」が明確になります。

社外・社内広報の課題をま両方とも明確にでき、活動の優先順位を決めやすくなるわけです。

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●ひとまずどんな人たちか会ってみたい場合

ちょっと話を聞いてみたい

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●もう少しどんな会社か知りたい場合

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特徴(他とどう違うの?)

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兼任広報担当者向け広報基礎知識-2 社外広報の課題整理術


2017年度に『月刊総務』の「総務の引き出し(広報)」に、兼任広報担当者向けに、広報の基礎知識をご紹介する連載を寄稿しました。
内容を一部加筆・修正して掲載します。


第2回社外広報の課題整理術

どのような仕事でも目的が大切と言われます。

たしかに、目的が明確なら適した手段を選択できます。
仕事の意義も実感でき、業務に取り組む姿勢が前向きになります。


目的を考えることって難しい


ただ、実際には、手段がある程度固まっている方が目的を考えやすいことってありませんか

たとえば、工場周辺地域の方を対象にイベント企画があるとしましょう。
この場合、イベントの目的は地域の皆様に親近感を持ってもらう等が浮かびます。
地域イベントという手段の「枠組み」があるからこそ目的が考えやすくなる。
考えた目的に応じてイベント内容を具体化していく。

このように、実は、仕事で目的を考えるとき、具体的手段から抽象的な目的を考え、もう一度、手段に落として詳細を詰めていく、という流れが多いのです。

活動全体の目的を、何もない状態から考えることは、難しいものです。
それは、「普段の目的を考える流れ」と異なるからです。

たとえば、社外広報、社内広報の目的は何かと問われて、すぐに回答が浮かぶでしょうか?
広報を総務に置き換えて「総務の目的は?」と問われた場合でも、すぐに返答できるでしょうか?
総務のプロはスムーズに返答できるかもしれませんが、新任担当者にとっては難しいことでしょう。

目的は経営戦略・計画と結び付けていくとよいともよく言われます。
ただ、経営の視座で俯瞰することも実際には難しいことです。
マネジャー層であっても、経営の視座で俯瞰して考えることができる人・できない人に分かれます。

事業部長層でようやく経営の視座で俯瞰できる。

理想論をもとに「最初に広報の目的を、経営的観点から考えていきましょう」とお伝えしても、あまりにも抽象度が高くて「目的自体をどう考えてよいのか分からない」状態になってしまうはずです。

もちろん、目的を考えなくてよいというお話ではありません。

「兼任広報」で時間もなく不安も多いのですから、目的を考えること自体をストレスなく進めましょう。
目的は、手段の枠組みがある方が考えやすくなります。

だからこそ、具体的手段の現状と課題を洗い出していくことが出発点。

今回は「社外広報」に絞って、目的を考えやすくなる課題整理術をご紹介します。


誰かに何かを知ってもらう


社外広報は、「誰かに、何かを知ってもらう」ことが基本です。

その成果として「印象・評価が良くなる」「お客様の購買や口コミ等の行動が増える」を目指すものに大別できます。
前者が信頼形成を目指す「コーポレート・コミュニケーション」、後者が販売促進を目指す「マーケティング・コミュニケーション」といったりすることもあります。

いずれも、業績や企業価値向上が最終目的です。

つまり、業績や企業価値向上という経営の大目的に対して、信頼形成、販促支援といった2つの小目的があり、「誰かに、何かを知ってもらう」ことが達成手段となります。

なんとなくスッキリしたとは思いますが、実務上はまだまだ抽象的ですよね。
もっと手段の枠組みを小さく・細かくしていきましょう。


広報は課題が目的になりやすい


目的を最初から考えるのではなく、まずは現在の広報活動・ツールを棚卸してください。
棚卸した活動・ツールの現状を評価し、課題を整理していくと、小さな目的が見えてきます。

最初は大変ですが、後でラクをするために、この作業はとても有効です。

まずは活動・ツールの棚卸。

主管業務に限定せず他部署の活動・ツールもすべて対象にします。
会社案内、ホームページ、パンフレット、営業ツール、採用ツール、プレスリリース、記者向け勉強会等、社史や社内報も社外に配布しているなら含めます。

棚卸した活動・ツールを、以下の視点で評価します。

  • (主に)誰を対象にしたものか
  • どんなときに使われたり実施されたりしているか
  • 何を発信できているか
  • 何を発信できていないか

表計算ソフトで表にすると良いでしょう。

たとえば、会社案内やホームページは必ずお持ちのはずです。

現状の会社案内やホームページを「誰に、何を知ってもらうことができているのか」「逆に、何を知ってもらうことができていないのか」等を確認していくと、たいていは「強みや魅力を表現できていない」という課題が見えてきます

広報では、こうして見えてきた課題こそ、そのまま目的として設定しやすい。
この例で言えば、「強みや魅力を知ってもらう」ことが、会社案内やホームページの新たな目的となります。
従来の会社案内やホームページは基本情報をお知らせすることが目的だったのではないでしょうか。

広報の専門知識をお持ちでない方は、課題整理を通じて目的が見えてくる場合がとても多いです。

最初から目的を考えるのではなく、具体的な活動・ツールの現状評価と課題整理から、目的を明確にしていく方法をおすすめします

いくつかの細かな目的が見えた段階で、もう一度、手段の内容を検討しましょう。
先ほどの例で言えば、「強み」や「魅力」とは具体的に何でしょうか?
他の媒体や活動では発信できていますか?

どの媒体・活動でも発信できていない、強みや魅力が何かを具体的にできないのであれば、そもそも強みや魅力は何なのかを明確にしないといけない、という直近の作業まで見えてきます。

「誰に」「何を」(ここでは強みや魅力)を特定できたら、専門知識がなくても戦略的な発想ができるようになります

たとえば、会社案内は対面で、ホームページは「マス」に非対面で閲覧されますね。
対面活用が多い会社案内は「人」の魅力が伝わるエピソードを中心にしよう、ホームページは他社と比較されやすいから、他社との違いをもっと訴求しよう。
このように最低限の労力で、ムダがなく、効果を最大化する全体像を考えることができるます。

まずは網羅的に課題を整理することで目的が見えてきます。

目的が見えると優先順位を付けやすくなります。

ここでアンケート調査を実施するとさらに良いです。この調査は、社内広報の課題整理にも関連しますので、次回、ご紹介します。

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●ひとまずどんな人たちか会ってみたい場合

ちょっと話を聞いてみたい

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●もう少しどんな会社か知りたい場合

サービス(何をしてくれるの?)

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