広報スキルアップ講座 聞く力(取材力)②

2019年度に『月刊総務』の「総務の引き出し(広報)」に、広報の基礎知識をご紹介する連載を寄稿しました。
内容を一部加筆・修正して掲載します。

前回に続いて「聞く力」を取り上げます。前回は、広報の仕事における「聞く」ことの特徴を解説したうえで、スキルアップ法として話を聞きながら要約することが有効だとご紹介しました。今回は、社内報やホームページコンテンツで社員インタビューがあるという想定で、実践的な「聞き方」のテクニックをご紹介します。

聞き方(取材)のポイント

 インタビュー(聞き方)の基本は、①徹底した事前準備、②インタビューでは答えやすい質問から始める、の2つです。それぞれ詳しく解説していきます。

準備段階

  • 下調べ

準備段階では、ありとあらゆる方法で下調べをしましょう。インタビューのテーマに関連する過去の報道記事、論文・書籍、社内報、稟議など「文物」に目を通すことはあたりまえ。これに加えて、インタビュー対象者の人柄や考え方などをつかむために、対象者とつながりがある同期・上司・部下などに必ず接触をしましょう。本人でしかわからないことが多い場合は、インタビューの前に本人にヒアリングをしましょう。

  • 必要な要素を考え抜く

インタビューの最終的な仕上がりを想定して、必要な要素を事前に考えておきましょう。背景、失敗・成功のポイント、助けてくれた人など、インタビューのテーマ・内容によって、必要な要素は異なります。要素を洗い出しておけば、聞くべき質問を考えやすくなります。必要な情報を集めることが取材でありインタビューです。必要な情報が何か定まっていないと、「聞き洩らし」が出てしまい、インタビューの後にもう一度、本人に話を聞く必要が生じます。

インタビュー場面(聞き方)

 インタビュー場面では、聞き方に留意しましょう。事前段階で下調べをしたり、必要な要素を考えたりすると、聞きたいこと・引き出したい発言内容が頭に浮かぶことがあります。起承転結の「結」ができあがってしまう状態です。こうした「結」が頭の中にあると、インタビューで「結」を早く聞きたくなってしまいますし、「結」に誘導するような聞き方になってしまうことがあります。頭の中にストーリーを描いておくこと自体は悪くないのですが、結論ありきの聞き方をしないようにしましょう。

 具体的にどうすればよいのか。基本として徹底したいのは「答えやすい簡単な質問から始める」ことです。

 まずは、どのようなインタビューであっても、「過去」→「現在」→「未来」の順番に聞くようにしましょう。過去に関する質問は、記憶に残っていることを話せばよいだけなので、だれもが答えやすい。まずは答えやすい過去の質問から聞き始めて、インタビュー対象者とキャッチボールをして、信頼関係を構築することが不可欠です。
 現在のことは客観視しにくく、未来のことは「考え」や「想像」を尋ねることになりがちです。唐突に現在や未来のことを聞かれても、饒舌で話好きな人でない限り答えに窮することが多い。インタビューにリズムが生まれません。

 たとえば、社内報で新規事業の担当者にインタビューする機会があったとしましょう。インタビューで、最初から「新規事業は現在、どのような状況ですか。課題はありますか」と聞いてしまうと、インタビュー対象者は、圧迫感や尋問を受けているような印象を持ちやすいです。また、最初から未来について「下調べしたところ新規事業は●●と●●がうまくいっているようですが、これからどのように展開したいと思っていますか」と聞いてしまうと、その質問ですべてが完結してしまう。インタビューが3分で終わってしまうのです。

必ず過去の質問から始めて、現在、未来の質問の流れをつくりましょう。たとえば、以下のような順番です。

  • 新規事業のアイデアはいつから浮かんでいたのですか。
  • 当時はどのようなアイデアでしたか。
  • 最終的に事業のコンセプトはどのようなものにしたのですか。
  • コンセプトができあがるまでにどのようなステップがあったのですか。
  • 事業を開始する段階で苦労した点は。
  • 現在はどのような課題がありますか。あるいは、うまくいっている点は。
  • 今後は、どのように展開したいと思っていますか。

 このように、過去→現在→未来の順番で話を聞いていくと、現在や未来の話に移行した後も、「そういえば過去にこんなこともあった」というエピソードがどんどん出てくるようになります。本人も忘れてしまっているようなエピソードが、実は「肝」や「起点」になっていたというケースはよくあります。

 聞き方の順番さえ気をつければ、インタビューの失敗を防ぐことができます。

インタビュー場面(関係づくり)

 最後に、話を聞きながら信頼関係をつくる一番良い方法をご紹介します。インタビューでは、必ず自分が「分からないこと」や、相手の話の意味を理解しきれないことがあります。
 このような場面では、気遣いのできる人ほど「相手の話を止めないようにしよう」「気を悪くしないようにしよう」と考えがち。これは気遣いではなく、単なる遠慮、または自分が恥をかきたくないだけの保身です。遠慮と配慮は違いますし、遠慮は時として単なる身勝手な保身になるのです。
 正直かつ素直に聞く方が、必要な情報を得られます。必ず「この点が分からなかったのですが」と、インタビュー中に聞きましょう。人は「話したい」生き物ですから、堂々と聞けば相手は必ず教えてくれます。