誌上セミナー
収入増を実現する産学連携の戦略的広報
意思決定の第一段階は問題認識
問題を認識していない消費者は購買を考えませんので、購買のプロセスは第一に問題認識があります。
産学連携の場合、従来は、明確に問題意識をもっている企業が、直接、大学の研究者との人脈をもとに産学連携を進めるか、大学または連携機関のコーディネート機能を経由して、産学連携を進めていました。
ところが、明確に問題意識をもっていて、かつ、産学連携というアプローチでこれを解決しようと考える企業は決して多くありません。
近年、各県の国立大学が、地元の産業に密接に関連した形で産学連携のプロジェクトをいくつも立ち上げています。
こうした現象は、企業の問題認識に対応するものと見ることもできます。
企業の問題認識に対応するコミュニケーションを検討するプロセスをご紹介しましょう。
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地域レベルの産業の特徴を調べる
極めて当たり前の話ですが、地域の産業の特性をきっちりとおさえる必要があります。
従来、大手の大学・研究機関の産学連携であれば産業特性を踏まえたプロジェクトがありますが、中小規模の大学の場合、研究者の人脈に依存したり、研究シーズを起点にした、いえば「プロダクトアウト」にとどまっていることもあります。
では、地域の産業の特徴をどうやって調べるのか。
現在、地方創生で自治体への情報支援として内閣府が構築した、「RESAS」というサイトがあります。
様々なデータをビジュアルで直感的に理解することができ、周辺地域との産業構造の違いを数値や図から理解できます。
RESASで完結できるとは限りませんが、産業構造を概観するには十分です。
企業レベルで問題を特定する
産業の特徴が見えてくると、必然的に主要な企業が見えてきます。
ここでは、収入増を実現する産学連携の戦略的広報を検討対象としていますので(マーケティング・コミュニケーション領域)、国レベル(マクロ)、地域レベル(メゾ)、企業・大学レベル(ミクロ)でいえば、企業・大学のミクロのレイヤーでいかに稼ぐか、その実現のためには企業が抱える問題を特定する必要があります。
換言すると、このミクロレベルでのマーケティング・コミュニケーション領域では、研究を主目的としている大学にとって発想を転換する必要があり、企業を顧客としてとらえる考え方が必要になります。
この意見は、大学は100%産業界に資するものになるべきだという趣旨ではなく、大学のごく一部の機能でこの考え方を適用できれば、産学連携を強化しやすくなるというものです。
企業は、顧客への価値提供を行っている存在です。
つまり、企業と連携して価値を創造したり、企業の課題を解決しようとした場合、大学は企業の先にいる顧客にまで目を向けることができれば、企業との連携のさらなる強化が見えてくることになります。
大学と企業の2者間ではなく、企業の顧客を含めた価値提供を考える、BtoBマーケティングに近い発想が有効です。
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問題レベルでタイプを特定する
問題を認識しただけでなく、問題が明確に規定され、原因が特定されなければ、解決の糸口を見出すことができません。
問題認識のタイプを理解できると、検討が進みやすくなります。
以下の図は、解決の緊急度と、予期できる問題かどうかを4象限に分けたものです。
比較的、消費財等のマーケティングの検討で適用しやすいモデルと考えられますが、企業の問題認識を底上げするためにどのような情報をどのような文脈で打ち出すと有効なのか、産学連携のコミュニケーション活動でも検討の初期段階では発想しやすいフレームでしょう。
たとえば突発的問題とは、なんらかBtoBの企業が、納入品について顧客から厳しい検査を要求されたものの、企業では検査設備を有しておらず、短い期間でなんとかこの問題を解決しないといけない、といった事象は大学・研究機関の設備利用でもよくあるのではないでしょうか?
大学側の目線で検査設備を持っている事実をただパンフレットに載せていても、企業の問題認識にはどうしてもつながりにくいものです。
企業側の目線から、企業が抱える問題を訴求していくことで、企業ニーズを喚起できるようになります。
企業と顧客との関係に目を向けながら、それぞれの象限で企業がどのような問題を抱えていそうか発想し、その問題を提示してあげれば良いのです。
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問題認識への対応は企業ニーズ喚起の出発点
これまで見てきたように収入増を目指す産学連携の広報・コミュニケーションで、問題認識は、企業ニーズを喚起する重要な出発点となります。
上記をヒントに検討を進めて、内製できることも多くあります。
大学・研究機関の個別の状況にどのように検討を進めていけば良いのかご興味がある場合は、お問い合わせください。
特に、
- 大手大学で産学連携の収入のテコ入れが必要になっている
- 中小大学で就職対策も見越した企業連携強化を進めていきたい
- 産学連携が一巡してやや頭打ち感があり、次の一手が見えにくい
とお考えの産学連携部門の責任者の方・ご担当者の方には、すぐにお役に立てると思います。
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