どうしたら社内提案をもっと増やせるのか?引き出せるのか?

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第2回の社内コミュニケーションに関する情報交換会を以下のテーマで実施しました。

「どうしたら、社員の提案をもっと増やせるのか?もっと引き出せるのか?」

社員から提案があるということは、社員が「意見」を持っているということです。

なんらかの意見がなければ社内でコミュニケーションは発生しませんし、情報の流通が促進されることはありません。

社内で提案制度を実施している企業は多くありますが、経験則では、提案をしてくれる社員は偏りがあります。
もっと良くしていきたいという意見がないのか、意見を明確にする能力の開発が必要なのか、提案の引き出し方がうまくないのか。
こうした問題意識から、今回のテーマを設定しました。

イベントを踏まえて、社内提案について簡単に考えてみます。

 

提案する側が「提案しにくいもの」って?


人は、「自分の領域でないもの」に関しては、具体的に提案の声を挙げにくいものです。

それは、以下の状態にあるものと考えられます。

  • 自分の業務範囲ではないため、情報が少なく、どうしても提案内容を具体化できない。
  • このため、単なる不平・不満と捉えられてしまうのではないか?と躊躇してしまう。

あるいは、社内の制度やルールの場合は、

  • おかしいと感じている内容について過去に合意をしており、自分の中で過去の意思決定と一貫性を保つことができない。

という場合もあるかもしれません。


提案が思っていた以上に出てこない場合は、まずは受け皿の位置づけについて考え直してみることが必要です。

文章も、プレゼンも、提案も、大事なポイントは伝わりやすさ。

伝わりやすい提案の整理では、以下が重要になります。

  • テーマ
  • 論点(≒意見)
  • 論拠

たとえば、イメージしやすくするために「手当」をテーマとすると、以下のようになります。

  • テーマ=手当
  • 論点(≒意見)=●●手当がつかないのはおかしいのではないか?
  • 論拠=???

こうした論拠が弱くなりがちなのは、自分の領域ではないものです。

 

じゃあ、提案する側が「提案しやすいもの」は?


逆に言うと、論拠さえあれば提案できるのでしょうか?

今回のイベントでは、提案できたことについて簡単に意見交換しましたが、定量データや社員の声などの事実、なぜそれが必要なのかという提案の論理、自らが絶対に必要だ・自分が一番詳しいんだという信念が重要というご意見がありました。

また、「ぎゃふんと言わせたい」という反骨心や、「このままではまずい」という危機的状況に置かれているかどうかという環境要因の声もありました。

つまり、提案行動として具体化しやすいものは、自らの担当業務の枠組み内で起きやすいものといえます。加えて、個々人が得られる利益の最大化といった個人的視座ではなく、職場や組織が得られる利益の最大化といった組織的視座があると、提案が通りやすい傾向がありそうです。

自らの担当業務の枠組み内であれば、意見と論拠を明確にしやすく、これを職場や組織が得られる利益の最大化の視座から整理できれば、確固たる信念にもつながっていくはずです。


印象的なのは、何人かの方が「職場マネジメント」について触れられていたことです。

つまり、提案行動は職場単位でこそ具体化しやすいにも関わらず、職場マネジメントの遂行状況によっては、提案が生まれなくなってしまうと言えます(当たり前のことですが)。

マネジメントの問題は、スタッフ側の立場だとコントロールできる範囲に限界があります。

意見・論拠・信念があっても、マネジャーの側に問題がある場合はどうすればよいのでしょうか。

一定の意見・論拠・信念があるのに提案行動を起こせない場合の受け皿機能が必要と言えそうです。

 

社内提案の3つの切り口


このように考えると、社内提案は、3つの切り口で設計していくことが必要と言えそうです。

  1. 論拠を問わず、意見だけを求めるタイプ
  2. 職場単位で行う改善提案のようなタイプ
  3. 組織的視座の提案で意見・論拠・信念があるのに埋もれているものを拾うタイプ

(1)論拠を問わず、意見だけを求めるタイプ

各部門が他部門から評価を得る“部門型360度評価”のようなもの、あるいは「社長に言いたい!」系と言えそうです。

360度評価のような性質と考えると、ガス抜きではなく、言われた側が改善をしたり、フィードバックをしたりすることが必要になります。
つまり、提案者に対して論拠を提示することは求めない方が自然ですが、提案された側から実現できない論拠を提示したり、アクションプランを提示したり、改善実績を示したりする必要があるものと言えます。

これを積み上げていくことで、部門間での相互理解や各種制度の理解も促され、建設的な提案を生みやすくなっていくのではないか、誰がどのような意見を持っているのかが見える化されていくのではないか、と考えられます。

このタイプでは、「多くの社員が提案する」状態を目指す必要はないのかもしれません。
論拠なく意見を述べることを全員がするようになると、まさに「散らかる」ことになります。
言いたい人に言ってもらう形でよいでしょうし、ニンジンをぶら下げる必要もないはずです。

(2)職場単位で行う改善提案のようなタイプ

具体的な課題の抽出と解決が必要な論拠、必ず良くなるストーリーが必要とされるものと言えそうです。
ここでは、マネジャーのマネジメント行動と、担当者としての能力が重要と考えられます。

担当者の能力とは、建設的批判や問題発見の能力、意見を明確にする能力、データ収集・分析を含んだ論理構築、視座の切り替え(メタ)などが重要そうです。
このようにまとめると、文化人類学的な調査・言語化(エスノグラフィー)が必要と考えられ、そもそも「自ら提案する」のは文系タイプが向いているのかも?、と思いつつ、単に仮説→検証という科学的発想ができるか否かなのかもしれないとも感じます。

いずれにしろ、組織側としてここを掘り起こそうとする時には、マネジャーに対して部下の仮説→検証というサイクルを引き出すことを推奨したり、メンバーの論拠を集める手助けをしたりすることを求めることが重要そうです。
マネジメントの原理原則である「人を通じて事をなす」を象徴する部分かもしれません。

メンバーの側には上記のような能力の開発が重要になりそうです。
人事主導のマスの教育とするのか、部門単位の教育とするのか、個々人の自己啓発とするのか、企業規模や業種・業態によって異なってくるのではないでしょうか。

このタイプでは、「多くの社員が提案する」状態を目指す必要がありそうです。
担当業務については、誰もが一番多くの情報を持っているはずですし、文字どおり改善を担うべきは最前線の担当者以外にあり得ません。

(3)部門・組織的視座で意見・論拠・信念がある提案なのに埋もれているものを拾うタイプ

ここは、部門・組織横断プロジェクトの公募等の形で実施されるケースが多いのではないでしょうか。
組織的視座がある前提なので、必ずしも職場単位で受け皿を用意する必要はありません。
マネジャーが口出しできない設計が必要です。
制度としてなんらかの規程に落とす必要があるでしょうし、思い切って非公式コミュニケーションの場にした方が良いのかもしれません。

このタイプでは、多くの社員ではなく「リーダークラスの社員が提案する」状態を目指す必要がありそうです。
マネジャーとのコンフリクトが生じやすいのはリーダークラスです。
(2)でのマネジメント能力形成の一貫として、部門・組織的視座で提案の一連のプロセスを経験しておくことは重要でしょう。


このようにまとめると、(1)~(3)のすべてで受け皿を用意できている企業もあるはずです。
それでも提案が少ない場合は、(2)で見たように「意見」を明確にし「論拠」を見出し、組織的価値に変換する能力のテコ入れが必要なのかもしれないですし、場合によっては、単純に社員の側が「どこに何を提案したら良いのか分からない」可能性も考えられます。

提案する側の立場から、見直していくことが出発点になりそうです。

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