【推薦本】世界の経営学者はいま何を考えているのか


コーポレート・コミュニケーション分野でも非常に参考になります。

たとえば「トランザクティブ・メモリー」。
著者の入山氏はこれについて以下のようにまとめています。

「近年の組織学習研究においてきわめて重要な考え方となっています。それは人の記憶と組織の記憶のメカニズムの違いを説明する決定的な考え方の一つといえます。

その基本発想はいたってシンプルです。トランザクティブ・メモリーとは、組織の記憶力に重要なことは、組織全体が何を覚えているかではなく、組織の各メンバーが他メンバーの「誰が何を知っているか」を知っておくことである、というものなのです。」

簡単に言えば「ノウフー」の表面化と共有化です。
広報・PR、コーポレート・コミュニケーションでは、社内で幅広く人脈を築き、媒体の要望、あるいは社会の要望と社内の人物を適合させていく作業を常にしているはずです。

こうした作業を、社内で共有化していくことが、組織の記憶力を高めていくことにつながり、コミュニケーションの効率化・活性化につながります。

本書では、「ソーシャル・キャピタル」(社会関係資本)についても触れています。
人間関係を資本としてとらえた理論とでも言えばよいでしょう。
この中で「ストラクチュアル・ホール」(構造的な隙間あるいは構造的空隙)という概念を紹介。これもコミュニケーション職で需要な概念です。

「バートが生み出したストラクチュアル・ホールの概念は、現在のソーシャル・ネットワーク研究においてきわめて重要なものとなっています。ストラクチュアル・ホールを多く持つ人は、ネットワーク上に流れる情報や知識をコントロールすることができるようになるため、それを利用して得をすることができる、という考えなのです。」

コミュニケーション職では「得」の部分はいったん横においておくとして、ネットワークとネットワークの間に立ち、情報や知識をコントロールしていくことは間違いなく仕事の一部に含まれています。

逆に言えば、情報や知識がコミュニケーション職に入っていないのであれば、それはネットワークとネットワークをつなぐことができていない、ストラクチュアル・ホールを持っていないということです。

このように、関係性構築を目指す仕事といえる広報・コミュニケーション職こそ読んでもらいたい一冊です。