2017年度に『月刊総務』の「総務の引き出し(広報)」に、兼任広報担当者向けに、広報の基礎知識をご紹介する連載を寄稿しました。
内容を一部加筆・修正して掲載します。
第1回総務で広報を兼任 要領よくやるには?
企業規模によっては広報の専門部署があります。
一方、総務部のスタッフが「兼任」で広報を務める企業も多いです。広報担当者が明確に決まっていない会社もあります。
いずれにしろ、兼務で広報業務を担う方は、優秀な人材の採用、社員の定着率向上、モチベーションアップ、社内での情報共有、経営理念の浸透、顧客先の開拓、知名度・イメージアップ、新製品・サービスのプロモーションなど、多くの広報課題を、他の業務と並行しながら要領良く解決していく必要があります。
広報兼務者は一般的に、広報と他業務とのバランスについて、組織の要請が「広報最優先」になることはありません。このため、広報課題を自覚していても、時間も少なく、現状より業務負荷が増す懸念もあり、活動強化に躊躇しがちです。これは自然な感情。しっかりと「ラク」をしながら、広報活動を実施しましょう。このコラムでは、「総務で広報を兼務している方」を対象に、要領良く広報業務を強化する方法をご紹介していきます。
広報兼務者の悩み
広報の専任部署がある場合、媒体や活動ごとに担当者が決まっています。このため、広報専任者は、個々の広報活動の「方法論」に悩みを持ちやすいです。
一方、広報兼務者は、そもそも何を優先して取り組むべきなのか、という点に悩みが絶えません。ただでさえ忙しい中で、兼務で広報業務を遂行しなければいけないからです。
活動の優先順位付けをしたいと考えた広報兼務者は、本屋で数多ある広報の専門書を手にとってみたり、広報研修を受けたりします。
ところが、情報はプレスリリースの書き方やホームページ活用法など「方法論」が中心。何から手を付けて良いのか分からないのに、いきなり各論の嵐が襲いかかる・・・。すると、「ウチの会社の場合、プレスリリースするほどのネタは滅多に無い。」「ホームページ活用と言っても最低限の予算でリニューアルする方法を知りたいのに。」「そもそも広報の専門家になりたい訳じゃないから、ここまでやらなくても良いよね。」という意識が生じます。
広報専任者にとっては数多ある「方法論」が助けになりますが、広報兼務者にとっては、「方法論」のせいで広報を強化するハードルが高くなってしまっている状況があるのです。
専門業者の得手不得手
実は、広報の世界は、これまで媒体の制作能力や、マスコミとのネットワークなどが専門的ノウハウとして存在してきました。パブリシティに強いPR会社、社内報制作、Web制作、広告デザインなど、細分化されて方法論が磨かれています。
このため専門業者は、自分たちが得意な方法論こそを、本にまとめたり、研修・セミナーを実施したり、ソリューションとして提供したりします。
これを逆さにひっくり返してみると、そもそも何を優先して取り組むべきなのかという「戦略」を専門業者が得意にしているとは限らない。
このため、広報兼務者が「そもそも論」を勉強できる機会は少なく、そもそも論を一緒に考えてくれる外部パートナーも少ない。
私は、媒体側・受注側・発注側のすべてを経験することで、この広報の世界の変わった姿を、客観視できるようになりました。
社内・社外広報を問わず、広報活動の強化で、主要な論点は以下の4つがあります。
- なぜ強化する必要があるのか
- 何を発信・共有するのか
- 誰を対象に発信・共有するのか
- どうやって発信・共有するのか
図表をご覧ください。
広報の専門業者は④が得意です。④は、社外の知見を活用できます。ここが広報の専門性。換言すると、①~③は社外に答えがありません。落ち着いて考えると、「目的」「何を」「誰に」は経営戦略と重なってくる部分が多く、必ずしも広報の専門知識を必要としません。
ところが、広報の専門知識がない広報兼務者にとっては、①~③の検討は、広報の知識がなければ検討できないと考えてしまいがちです。だからこそせっかく広報について学ぼうとしているのに、④の情報に接するばかりで、優先順位を付けたいというニーズとのギャップが大きい。
結局何からやったら良いのか分からないので迷いが増えてしまい、活動強化に踏み出すことができないのです。
このように広報兼任者にとって、「とりあえず専門書」「とりあえず研修」が成立しにくい現実があります。
優先順位の決定に専門知識は不要
専門業者の得手不得手をご説明したため、「ウチの会社は、まだ専門業者を使う段階ではない」と感じた方もいるでしょう。お伝えしたかったのは、以下の2点です。
・①~③の整理は広報の優先順位付けと同義
・しかも専門知識を必要としない
ラクをするためにも、①~③を考え抜くことが大切です。これが明確になれば、自己啓発や外部研修で学ぶべきものも明確になります。仮に専門業者の力を借りたい状況になっても、必要最低限の発注コストで済むようになります。
予算・時間・労力等のリソースに限界があれば、当然、活動の範囲も限られます。広報兼務者にとっては、(当たり前のことですが)何を優先的に実施すべきかを整理することがすべての出発点。課題整理や問題定義ができれば、あとは「できる範囲」で実践するだけ。業務負荷が劇的に増えることはありません。安心して広報の強化を目指し、広報の仕事をぜひ楽しんでください。
次回から①~③に該当する部分をご紹介していきます。次回は、①なぜ強化する必要があるのか、つまりは、現状の課題をどうやって整理していけば良いのかをご案内します。社外広報と社内広報に分けて、広報兼務者の目線から丁寧に紐解いていきます。
●ひとまずどんな人たちか会ってみたい場合
ちょっと話を聞いてみたい
●もう少しどんな会社か知りたい場合