【推薦本】生き残る判断 生き残れない行動


9.11テロを中心に、災害時に生き残った人の行動や思考を、膨大な取材からまとめた本です。

タイトルからは想像もできないほど、しっかりと心理学に根ざし、災害行動はもちろん、企業での緊急時対応、あるいは飛躍するならば企業経営にも活かせる部分はあると思います。

危機的状況に直面したときに、どうしても人は「否認」をしてしまいがちです。

その否認の恐ろしさを、いくつもの災害時の事例から生々しく実感できます。

経営でも、あるいは現場の担当者でも、なにか変だと感じ、やらないといけないと頭の中で考えているにもかかわらず、「まだ大丈夫」と考えてしまうことはありませんか?

起きている目の前の事象をありのままに受け止めて、迅速に行動することでしか、危機的状況の変化には対応できないのかもしれません。

読み物としても引き込まれる良著です。

【推薦本】戦略と実行


戦略は実行されなければ意味がないものです。

経営と現場はどうしても考える視点・視座・視野がまったく異なりますので、乖離しやすいものです。

ところが、実際には現場の方が有益な情報を持っていることも多いものです。

本書は、実行を中心に、かつ、組織内コミュニケーションに比重を置いています。

考えなしに走り出すことを嫌う人もいますが、走りながらでなければ見えてこないこともたくさんあります。

結局はコミュニケーションを密にできるまでやるしかないのです。

ここ数年、地方創生を受けて自治体でも戦略の重要性が指摘されています。戦略も大切ですが、実行されないもの、現場と乖離したもの、住民にとってのアウトカムに繋がらないものでは何の意味もありません。

企業だけでなく、自治体職員にとっても参考になる部分はあるかもしれません。

【推薦本】独自性の発見


マーケティング・コンサルタントによる本ですが、ブランドの本だと考えた方が理解がスムーズだと思います。

それは本書が、独自性や差別化について深く扱っているからです。

広報の現場担当者だったときに、懇意にしていた日経の記者から言われたことは「新奇性」の重要性でした。

世の中に届ける情報価値は「新規性」では足りないのです。

また、日本テレビの元社会部長が講演でおっしゃっていたことも印象に残っています。

「あす、もしあなたの会社がなくなったら、誰が何に困るのですか?」

これを突き詰めて考えると、取材する意義を見出すことができる。

事例は少し古いものもありますし、主張そのものに顕著な目新しさがあるわけではないのですが、このままではダメだという気づきや差別化の戦略を考えるヒントは多数得られることでしょう。

【推薦本】社長が自分と自分の会社を診断する本―誰も言ってくれない自分と会社の盲点と欠点を探る


自分のことはどうしても客観視できないものです。

先日参加した動画制作会社のセミナーで、興味深いことがありました。

「社員を活かして動画をつくれば活性化します。できるだけ内製化して動画をつくりましょう」という内容。

ひととおり終えた後、講演者が「我が社の動画も見てください」としてご紹介いただいたのですが、ポイントは「自分たちのことは自分では分からないので本当はもう少しうまくつくりたかった」とのこと。

内製化すべきと言いながら・・・という気持ちになってしまいましたが、どんな道のプロでも、自分のことは客観視できなくて当たり前です。

とくに企業経営となると、より分かりません。

本書では、経営の原理原則とでも言うべきたくさんの問いを投げかけてくれます。

30年も前の本ですが、良著です。

【推薦本】「コト発想」からの価値づくり


書名のとおり、技術者向けに、マーケティングってどのようなものなのかを、実践的な方法論をベースにまとめている内容です。

技術者に響きやすいように、顧客が抱えている「不」の解決からアプローチして、価値を見出していく方法は、非常に分かりやすいです。

実は、本書掲載の「不」のリストは、結構、いろいろな企画を考えるときや、ワークショップのネタとして、重宝しています。

技術者に限らず、企画担当者も、「快」とは別の軸で常に考えておきたい実践的な方法論です。

もっと売れても良い内容だと思います。

【推薦本】コーポレート・アイデンティティ戦略


日本におけるCIの第一人者であるPAOSの中西元男氏の本です。

ご本人が手がけられた数々の事例が、成功談ばかりではなく紹介されています。

記載されている事例からは置かれている環境の分析がやや足りないのではないか?という気はしますが、当時としては十分だったのでしょうし、洞察は鋭さを感じます。

必ずしもVIに矮小化されることなく、事業開発や社内活性化に通じるCIの原理原則に則した事例の数々は、大変参考になります。

また、VIの部分もしっかりと既述されており、CIの原理原則から落ちてきたVIの意義・重要性に、深く納得ができます。

私はこの本を2013年ごろに読んだと記憶していますが、それ以降、企業ロゴ(シンボル)を見る目が大きく変わりました。

昨今、シンボリックな企業ロゴは少なくなり、キャンペーンロゴのようなストレートで分かりやすいロゴが増えていますが、計算され尽くしたシンボルが持つ意味や価値に、本書でほんの少しでも触れることができると、人生が少し豊かになります。

【推薦本】機会発見ー生活者起点で市場をつくる


定量調査等を通じた分析的アプローチによる問題解決ではなく、行動観察などの定性調査を通じた創造的アプローチによる、市場を見つけ出す・創り出す方法論をまとめた本です。

実は、創造型アプローチによる実践的方法論は、『実践 創造型マーケティング』という本が2009年に産業能率大学総合研究所の編著で出版されていますが、それ以降も、エスノグラフィーやデザイン思考などピンポイントのテーマで紹介されるものはあっても、市場の創造技法を体系立てているものは、あまり見当たりませんでした。

今回の『機会発見-生活者起点で市場をつくる』は、丁寧にステップを整理し、方法論の特徴も解説され、ハンドブックのように、いつでも分からないときに立ち戻ることができる本です。

経営者やマーケティングにかかわる人は必読ですし、営業担当者が定性調査の感性を研ぎ澄ますことができると、たいへん強いです。

文系になじみのない研究開発部門の方には、驚きのある内容でしょうし、理系の方にはあえてチャレンジしていただきたい内容です。

なお、2009年の『実践 創造型マーケティング』も、たいへん刺激的な内容で、独創的な方法論がまとまっています。

【推薦書】企業変革とCI計画


すでに30年近く前の本ですが、まったく古びることがありません。

日本では、「CI」が1980年代にブームになりましたが、「VI」に大きく偏って拡がってしまいました。

VIも大事な要素ですが、CIは、以下の3つで構成されると考えられています。

コーポレート・アイデンティティの構成要素

  • 「VI」(ビジュアル)
  • 「MI」(マインド)
  • 「BI」(ビヘイビア)

CIとはロゴ・デザインなどの「VI」だけで完結できるものではありません。

こうしたCIの基本的な構成の解説ではなく、企業変革に活かすにはどうしたら良いのか、CIの観点でどのような組織診断を実施すれば良いのか、人材開発やリクルーティングまで落とす設計をどうするか、多くのフレームが示されています。

とても分厚く読むのが大変なので、企業文化の階層、企業文化の類型、意思決定スタイルとしての企業文化など、モデルや象限に分けた図を眺めるだけでも多くのヒントがあるはずです。

【推薦本】ビジョナリーカンパニー4 自分の意思で偉大になる


「ビジョナリー・カンパニー」シリーズの4冊目で、今回の内容は、10X型(10倍以上)の成果を出した企業の特徴を分析しています。

10X型企業は、次の3つの基準をクリアするものとし、歴史的事例から探しています。

  1. 15年以上にわたって株式市場平均や同業他社を凌駕するなど、真に目覚ましい実績を上げ続けた企業
  2. 制御不能で急ピッチに変化し、不安定で潜在的に有害であるなど、置かれた環境が非常に厳しいのに「1」のような実績を達成した企業
  3. 偉大な企業へ脱皮する前、つまり10X型企業への旅路を歩み始めた当初は歴史の浅い中小企業であり、経営基盤がぜい弱

調査の母数は2万社超!

興味深いのは、10X型の成功を成し遂げたリーダーは、比較対象になった企業のリーダーと比べて、すべての面で優れているわけではないと言います。

  • より創造的というわけではない
  • より先見の明があるわけではない
  • よりカリスマ性があるわけではない
  • より野心的というわけではない
  • より運に恵まれているわけではない
  • よりリスクテーキングというわけではない
  • より英雄的というわけではない
  • より英雄的というわけではない
  • より大胆な手段に打って出ているわけではない

「10X型リーダーは常に不確実な状況に置かれていることを認識している。外部環境は彼ら自身に大きな影響を与えるとはいっても、自ら外部環境を制御できないし、それが将来的にどう変わるのか予測もできない、と認識しているのである。一方で10X型リーダーは、不可抗力や偶発事象によってすべての結果が決まってしまうとも考えていない。自分の運命がどうなろうと、それについては全面的に責任を負うつもりなのだ。つまり、自分の運命を制御するのは自分であるということだ。」

もっと興味深いのは、10X型リーダーの主要な行動パターンを見出している点です。

  • 狂信的規律・・・一貫した価値観、長期目標、評価基準を設け、これを維持するために狂信的規律を導入する
  • 実証的創造力・・・実証的な根拠を蓄積し、決断・行動に不可欠な実証的な基盤を築く
  • 建設的パラノイア・・・いつ何時逆風に見舞われてもおかしくないと考え、準備を怠らない
  • レベルファイブ野心・・・自己を超越した大義のために全身全霊をささげている

言葉がスッと入ってこなくて難しいのですが、ヒントがたくさんあります。

要するに、以下のようなことです。

  • 狂信的規律→ぶれない
  • 実証的創造力→やってみる
  • 建設的パラノイア→油断しない
  • レベルファイブ野心→志が高い

成果を出すために、とても参考になる内容です。

【推薦本】世界の経営学者はいま何を考えているのか


コーポレート・コミュニケーション分野でも非常に参考になります。

たとえば「トランザクティブ・メモリー」。
著者の入山氏はこれについて以下のようにまとめています。

「近年の組織学習研究においてきわめて重要な考え方となっています。それは人の記憶と組織の記憶のメカニズムの違いを説明する決定的な考え方の一つといえます。

その基本発想はいたってシンプルです。トランザクティブ・メモリーとは、組織の記憶力に重要なことは、組織全体が何を覚えているかではなく、組織の各メンバーが他メンバーの「誰が何を知っているか」を知っておくことである、というものなのです。」

簡単に言えば「ノウフー」の表面化と共有化です。
広報・PR、コーポレート・コミュニケーションでは、社内で幅広く人脈を築き、媒体の要望、あるいは社会の要望と社内の人物を適合させていく作業を常にしているはずです。

こうした作業を、社内で共有化していくことが、組織の記憶力を高めていくことにつながり、コミュニケーションの効率化・活性化につながります。

本書では、「ソーシャル・キャピタル」(社会関係資本)についても触れています。
人間関係を資本としてとらえた理論とでも言えばよいでしょう。
この中で「ストラクチュアル・ホール」(構造的な隙間あるいは構造的空隙)という概念を紹介。これもコミュニケーション職で需要な概念です。

「バートが生み出したストラクチュアル・ホールの概念は、現在のソーシャル・ネットワーク研究においてきわめて重要なものとなっています。ストラクチュアル・ホールを多く持つ人は、ネットワーク上に流れる情報や知識をコントロールすることができるようになるため、それを利用して得をすることができる、という考えなのです。」

コミュニケーション職では「得」の部分はいったん横においておくとして、ネットワークとネットワークの間に立ち、情報や知識をコントロールしていくことは間違いなく仕事の一部に含まれています。

逆に言えば、情報や知識がコミュニケーション職に入っていないのであれば、それはネットワークとネットワークをつなぐことができていない、ストラクチュアル・ホールを持っていないということです。

このように、関係性構築を目指す仕事といえる広報・コミュニケーション職こそ読んでもらいたい一冊です。

 

 


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