兼任広報担当者向け広報基礎知識-6 広報ネタの発想法①

2017年度に『月刊総務』の「総務の引き出し(広報)」に、兼任広報担当者向けに、広報の基礎知識をご紹介する連載を寄稿しました。
内容を一部加筆・修正して掲載します。


第6回広報ネタの発想法①

前号までに、広報兼任の方が効率重視の広報戦略を考える方法をご紹介してきました。ところが、「そもそも広報するネタがない」という悩みもありませんか。兼任では時間・労力に限りもあり、ネタの掘り起こしまでなかなか手が回りません。そこで、今号から、広報ネタの考え方や発掘方法をご紹介します。


あなたもネタハンターになれる

私は、ある組織で広報実務を担当していたとき、組織内で「ネタハンター」と呼ばれていました。ネタを嗅ぎつける能力を有しているという意味です。記者の仕事をし、PR会社にもいたので、経験上、その情報が広報ネタになり得るのかどうか、直感的に判断しやすかったのは確かです。

実務を離れ、コンサルテーションや講師を行う立場に変わってから、自分自身がネタハンターと呼ばれるまでに何をしたのかを振り返って整理しました。その結果、こうした「ネタハント」業務は、一定の標準化が可能で、スキルとして獲得可能な技能だと考えています。

ネタハントの方法は、3つあります。

  1. 発想法を活用する=何がネタになり得るのかを習得する
  2. 埋もれているネタを見つける=イントラなどの社内公開情報を基にアタリを付けて足を使って掘り起こす
  3. ネタをひねり出す=競合他社の動向を調べて、同じようなネタがないかを尋ねまわる

今回は「1.発想法」について詳しくご紹介しましょう。


広報ネタの発掘=発想法を活用する


「経営資源」こそが広報ネタになり得るものです。

経営資源は、①ヒト、②モノ、③カネ、④情報の4つを指すことが一般的です。

これに沿ってネタを考えていく「発想法」が、一番、ネタの棚卸が容易です。ネタ発掘のセンスを磨いていくことにもつながりますので、ぜひ実践してみてください。


ヒトをネタにする
~ヒトを起点に切り口を考える


分かりやすいのば「経営トップ」。トップが語ればプライベートでもネタになります。

トップ以外では、社員の属性から考えます。たとえば、職位では新人、中堅、係長層、課長層、部長層、経営層があります。職歴では、3年目、5年目、10年目など。ほかにも年代、所属部署、役割(開発担当者、OJTリーダー)、プライベートの状況(結婚前、子育て中、介護中)等々、様々な属性があります。属性を並べただけでも、何が発信可能かを、考えやすくなります。

たとえば、子育てと仕事を両立している社員がいるなら、そのヒトを中心にして、周囲のサポートや会社の制度などを社内外に発信できます。

課長層に焦点をあてるなら、働き方改革など注目されやすいテーマについて、経営の要求と現場の現実に葛藤しながらも成果を出した人がいるなら、社内広報はもちろん、社外広報でもテレビ取材の働きかけさえ可能でしょう。

ベテラン社員に焦点をあてるのであれば、業界内で卓越した技術を有する人はいませんか? その人が技術を積み上げてきたエピソードも良いですし、技能標準化のためにIoT化も進めているようであれば、社外広報ネタにも発展できるはずです。


モノをネタにする
~情報価値を上げることに注力する


いわゆる新製品・新サービス情報などです。ところが、モノの情報はあふれているだけに、単に「新しい」と訴求しても注目されにくい。情報価値を高めるように加工していくことが必要です。

この場合、以下のような「切り口」を見出していくと情報価値が高まります。

  • 新奇=新しいだけでなく、珍しい部分に焦点をあてる
  • 時流=便乗できる流行があるなら便乗
  • 共同=他社との協力関係(提携等はもちろん、ウィンウィンの取り組みなど)
  • 実績=上市から●年、シェア●%達成等
  • 季節=四季はもちろん、入社、株主総会、異動など
  • 限定=このエリアでは、この業界では、この部門では等
  • 実利=おトク、使える、役立つ
  • ビジュアル=絵になる写真、目で見て分かる 等

上記の切り口の他にも、「モノを訴求しながらヒトを素材とする」ことも可能です。
たとえば開発担当者に焦点をあてる、開発から販売までのサプライチェーンに関わるヒトを紹介する、モノを使用しているお客さまに登場いただく等がすぐに浮かぶのではないでしょうか。


カネをネタにする
~おカネの話を堂々とする


経営計画や事業戦略は社内広報ネタにしやすいです。社外広報でも有効です。ただし、上場していない場合は、どこまで何を出すのかという議論が必要になることでしょう。

おカネ周りで、意外と埋もれがちなのは、生産性向上やコスト削減の取り組み。

専門紙誌の多くはこうしたネタは大好物です。もし、生産性向上の取り組みをしていて、社内報で紹介したことがあるなら、その内容を記者に情報提供するだけでも、取材してくれることでしょう。HPコンテンツとしても訴求力があります。お客さまから見れば「創意工夫ができる会社」「できるだけ安く提供しようと努力している会社」という評価につながりやすいです。おカネの話を堂々としましょう。


情報をネタにする


実は、自社がもっている「情報」もネタにできます。もちろん、保有している顧客情報をそのまま出すべきというような意味ではありません。

たとえば、テレビの特集企画で飲食店や美容などサービス業で「来店客が増えている」というようなデータを目にすることはありませんか? 自社が持つデータを広報ネタにできます。

生産財であれば、地域別・事業別の売上構成の変化など公表データから、自社が属する市場自体の変化など「業界情報」に置き換えて発信することも可能でしょう。

とくに、業界全体を語る・業界動向を解説するような情報を発信すると、リーディングカンパニーという印象づけができます(競合他社の論評は避けます)。大手の持株会社やグループ会社のホームページでは、こうしたコンテンツの発信を進めている会社も出てきています。

このように「情報」も社内外に発信可能なネタにできます。

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●ひとまずどんな人たちか会ってみたい場合

ちょっと話を聞いてみたい

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●もう少しどんな会社か知りたい場合

サービス(何をしてくれるの?)

特徴(他とどう違うの?)

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